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あの夏、いちばん静かな海。のsonozyのレビュー・感想・評価

4.0
少ないセリフ、波の音、久石譲の音楽..穏やかな時間が流れる北野武監督らしからぬ(バイオレンス無しの)作品。

ごみ収集の仕事をしているろう者の青年・茂(真木蔵人)が、捨てられていた先端の折れたサーフボードを拾い、自分で修理して近くの海でサーフィンを始める物語。

茂は同じろう者の彼女・貴子と2人でボードを抱え毎日近くの海まで歩く。
ウェットスーツもないのでTシャツ&ショーツで海に向かう彼が脱いだ服を畳み、座って下手くそなその姿を笑顔で見守る貴子。

二人は手話での会話も少なく、目や表情で通じ合う感じ。

毎日海に通い黙々とサーフィンに打ち込む茂を支えてくれることになるサーフショップの店長、茂の仕事の先輩。

当初は茂をバカにしていたがその姿に影響されサーフィンを始めてみる同級生コンビ。
浜で休んでる茂(や他のサーファー)の隣に座り、夏みかんをむいてもらうのをきっかけに近づく”みかん女”(笑)といった可笑しいキャラ。

サーファーたちの会話も、演出してなさそうな素人感が面白い。
黄色、オレンジ、ピンク..のカラフルなウェットスーツは当時の流行りだったのかな?笑

サーフィン大会の申込書に、茂がふざけて鉛筆で「身長: 420cm、体重: 2kg、血液型: E、保護者氏名: ゴルバチョフ(笑)」とか書いたのを微笑みながら消す貴子。

真木蔵人の醸し出すサーファーらしい佇まい、海を見つめる優しい目がいい感じ。(彼は元々サーファーですからね)

画面から流れる波と風の音を聞きながら、茂と貴子、2人の静かな無音の世界を想像し、後半の突然の意外な展開につながるこの邦題も好きです。
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