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あの夏、いちばん静かな海。のNAOKIのレビュー・感想・評価

3.7
ずいぶん前のテレビ番組…

それは年末年始のスペシャル番組かなにかで笑福亭鶴瓶と北野武の二人がその一年の出来事を語り合うという趣旨の対談番組でした。

その中で鶴瓶師匠がたけしの映画を褒め…「おれも出してくれよ」と迫る一幕が…

たけしは出してもいいけど…それならカメラテストをしようと言い出す…

ちょうどセットが昭和の飲み屋街を模したものだったので…その一軒を使ってちょうど飲んで出てきた男を演じてくれ…と

そもそもテレビのバラエティ番組だったからどこまで二人が本気だったのか分からないけど…鶴瓶の方は笑ってしまってなかなか演技が出来ない。

その時…たけしが自らやってみせる演技指導みたいなことをやったのだ。

「飲んだ男がのれんをくぐると外はちょうど雨が降りだしてる…男はちょっと躊躇するんだけど『ええいままよ』と外に走り出す…なぜならあんまり躊躇していると店の人間が外の雨と自分に気がついて店の傘を持って出てくるだろう…そんなことになっては迷惑かけてしまう…そう思った男は気付かれる前に雨の中に走り出すわけだ」

…と言いながらそれをまさに演じて見せる…

「ほんのちょっとの時間に心がそういう風に動くのを動きだけで表現するわけ…健さんとかこういうのが上手かったんだよ」

そのバラエティ番組のセットでのれんをくぐってちょっと空を見上げて走り出すたけしの姿はまさに映画のワンシーンを見てるようでおれは鳥肌がたつような感覚を味わった…

「やっぱりこの人は本物だな…」

そんなたけしが聴覚障害者同士の一夏の恋をサーフィンを通して描いた…
「あの夏、いちばん静かな海。」

前述のテレビ番組で証明した通り…たけしは台詞のない二人の表情と動きだけで心を描いていく…

映画に言葉は要らないのか?
怒号が飛び交うたけしのヤクザ映画と対局にあるようで同じセンスで撮られていることに不思議な感動を覚えました。
故淀川長治先生がこの映画を絶賛していたのを思い出します。

音が聴こえない二人を主人公にしたこの映画はとても静かだ…しかし、そのせいでコミュニケーションに支障が出るどころがより雄弁に二人の気持ちを伝えてくるように感じる…
それはちっともハンデイキャップなんかじゃない…

「やっぱりこの人は本物だな…」

さっきのたけしと鶴瓶の番組はネットで今でも見れると思いますが…さっきのカメラテストのシーンはともかくその年についての二人の対談はずいぶん面白かった覚えがあります。

鶴瓶師匠がたけしのカメラテストに合格したかどうかはわかりません。現在のところはまだ出てないみたいやね😁💦
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