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山桜のodyssのレビュー・感想・評価

山桜(2008年製作の映画)
4.5
【日本映画の素晴らしさを満喫】

藤沢周平原作の時代劇映画はどれも平均以上の出来、というのが私の見解ですが、中でもこの映画は傑作と言えます。
日本映画の素晴らしさを満喫できる作品。

まず風景描写が美しい。筋書きの展開も淡々としており、日常生活の営みを重視しています。要約してしまうと劇的なお話とも言えるのだけれど、要約できない画像や進行の充実感があり、観客を捉えて離しません。

主人公の二人は表情や言葉を静謐に保ちながら、大胆な行動に自分を駆り立ててゆく。穏やかな河の流れの中に小さな生物の生死の営みがひそんでいるように、二人は黙って自分の信念に従うのです。
日本の映画を見たという満足感が湧いてくる、そんな作品です。

田中麗奈、とても良かった。時代劇という観点からするとやや現代的な感じもしますが、今の時代に時代劇を作るならこのくらいでも不自然ではないでしょう。『暗いところで待ち合わせ』に続く好演です。年甲斐もなく、彼女のファンになってしまいそう。愛があれば年の差なんて(笑)。

檀ふみも良かった。私は若い頃の彼女は全然趣味じゃなかったんですが、武家の母親役、似合ってますね。この線で行ったらいいんじゃないかなあ。
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