深獣九

ゼイリブの深獣九のレビュー・感想・評価

ゼイリブ(1988年製作の映画)
3.5
そう、私たちの世界は、目に見えない何者かに支配されている。支配者は私たちに感づかれないよう消費を促し、結婚し子を産めと指示し、考えるな、眠れ、権力者に逆らうなと、従属を強いるメッセージをテレビから流している。それは現代でも続いており、変わったのはインターネットというメディアになったということだけ。私たちは支配され続けている。
ジョン・カーペンター監督の『ゼイリブ』では、世界は宇宙人によって支配されているが、現実の世界ではサングラスをかけても宇宙人や飛行偵察機は見えない。だが、なにかに支配されているのは事実であろう。それに気づき抵抗する者は抹殺され、多くの気づいていない人々は貧困や差別、搾取などで少しずつ滅亡へと追い込まれている。気づいて消されること、気づかずに消されること、幸せなのはどちらだろうか。

古い映画を観ると、世の中の基本的な構図や問題はまったく変わっていないのだなと、いつも感じる。先日見た大島渚監督の『飼育』でも同じ。人間は変わらない、変われない。だからこそ常にそれを意識し、学び、考え、行動しなければならない。そう思う。

終幕、手品の種が明かされ、支配されていることが露わになった。『ゼイリブ』の世界は変わるのだろうか。変わらないのだろうな。

いま、もうひとつの可能性に気づいた。すべては貧困による妄想だということ。
あぁ、私もだいぶ電波にやられてるなぁ……。
深獣九

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