YokoGoto

夏の妹のYokoGotoのレビュー・感想・評価

夏の妹(1972年製作の映画)
3.6
大島渚監督というのは、やはり『映画監督』だな、と感じる。大島渚監督が自らの制作会社である創造社で撮った最後の作品『夏の妹』。1972年の古い作品ではあるが、今観ると、レトロなファッションが逆にスタイリッシュで、最近の邦画と比べても、画作りが丁寧だし魅力的。ほとんど、大きな出来事もなく進んでいくが、ついつい引き込まれてしまう底力をもった作品だと思う。


沖縄返還直後、オール沖縄ロケで構成された物語。
日本であって日本ではない沖縄と本土との戦争の温度差や、言葉をはじめ文化の差が、比喩的表現の語り口で描写された作品。沖縄語と言われる沖縄の方言は、まったく理解できない。まるで、東南アジアの言葉のような印象。


沖縄の売春宿の話や、裏路地の酒場の雰囲気など、返還前後の沖縄の姿が、遠回しながらも物語のエッセンスとなり考えさせられ一面もある。南の島のバカンスだけでなく、戦争の歴史や米軍と共存している沖縄を、きちんと知る必要性があるなとも感じた。


映画は、全編とおして、主役の栗田ひろみさんが魅力的。
当時のアイドル女優さんだったそうだが、セリフが通しで棒読みで(笑)、慣れるまでは、最初はかなり困惑した。でも、慣れると「こういうもの」と割りきって見進めることができるようになり、最後は大分気にならなくなる。(笑)


それよりも、彼女のまあるい瞳とビーバーのような前歯がキュートで、画面全体を天真爛漫なかわいらしさで覆ってしまい、観る人を癒していく。彼女は当時14歳。なのに、二十歳くらいの色気と大人っぽさがあり、その中の可憐な可愛らしさが、妙になまめかしい。昨今の女優さんで、こんな魅力を画面いっぱいに映し出せる女優さんはいるかな?と。
さらに、沖縄の暑い日差しと汗が、余計、彼女を色っぽくみせる。このあたりは、大島渚監督の演出の素晴らしさだと思う。


彼女のファッションもかわいい。ちょっとでもかがんだら、下着が見えてしまうほどの超ミニスカートからスラリと伸びた足と、まっすぐ伸びたツヤツヤのロングヘアー。かわいい。
このルックスだけで、大島渚監督が、この棒ゼリフを許してしまった理由が理解できる。(笑)


まるで、8mmのホームビデオカメラでおさめた夏休みの思い出のような、カメラのグラグラ感。
レトロな画とあいまって、なんかオシャレな雰囲気を醸し出しているのは、この時代に観直しているからこそかもしれないが、都会のオシャレなバーで流れてたら、すごいスタイリッシュな画づくりだと思った。
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