幕のリア

いのちの食べかたの幕のリアのレビュー・感想・評価

いのちの食べかた(2005年製作の映画)
4.0
出張で中国の工場に行った際に、豚をスシ詰めにしたトラックと並走することがよくある。
うだるような暑さの中、まさに立錐の余地も無い積載量200%超え。
暑いな、狭いな、喉乾いた、お腹減った、眠いな、吐きそう、とか一頭一頭が何事か考えてるのは伝わってくるし、たまに目が合ったのかとドキッとする事もある。
横顔の動物の目はなかなかの恐怖だ。
トラックごと一匹残らず、一両日以内には切り刻まれた部位が市場に並ぶのだろう。
引っ越しじゃないから、生存確率ゼロ。
その晩、夕食に酢豚などを頂いたりするのだが、昼に出会った豚トラックの事はすっかり忘れている。

ナレーションも字幕も無いドキュメント映像。
なんらかの商品を大量生産するのには、動物も部品も機械も大して変わりはない。
工場も農場も規則的な空間の中で、一定の作業を経た費用対効果としての商品や半製品が生産され続ける。
そこに感情を重ねても詮無いことだ。
"食罪"なんて邦題がついてたら目も当てられない。

鑑賞者に言葉を委ねる余白は見事。
シンメトリーな工場の情景は荘厳でもある。
初めて見る作業効率を上げるための情け容赦ないマシンの数々はシルシルミシル。

なんて、平生を装おうにも、豚の屠殺工程や死期を悟った牛の足掻きなど胃腸がキリリと攣りそうなシーン多数。
ドイツ・オーストリア作品とくれば、どうしてもステレオタイプな虐殺の過去を想起させられる。
ゾンダーコマンドかくありなん。

工員さんはせめてマスクしよう。

キューブリックなポスターヴィジュアルが大変クール。
幕のリア

幕のリア