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魔の家のhorahukiのレビュー・感想・評価

魔の家(1932年製作の映画)
3.5
ODHの金字塔的な名作ホラー!

大雨の中、立ち寄った家は『魔の家』だった!極度に心配症な爺、小煩い婆、半人半獣のような凶悪な外見の召使いと怪しさ抜群…😰でも天候と土砂崩れで外に出れない。今にも「何か」が起こりそうなヒリヒリとした雰囲気を引きずりつつ、次第にこの家の屋根裏に潜む「秘密」が明らかになっていく。

『フランケンシュタイン』『…花嫁』『透明人間』で有名なジェームズホエールが、怪人的な召使いにボリスカーロフを据えて監督した所謂ODHもの。原題が、『バット』『猫とカナリヤ』からスタートしたこのジャンルの語源になってるのかな?『ナイトタイド』や『誰がルーおばさんを殺したか?』のホラー監督カーティスハリントンが発見するまで30年近く紛失していたものらしい。

内容はODHらしくコミカルでコメディ要素が強め。やたらとポテトを勧めてくる爺の「ポテトどうぞ」が軽いツッコミみたいな役割を果たしてるのが堪んないし、婆の花か何かをポイッと暖炉に放り投げたり(もちろんわざと)、爺から「重くて持てねぇから運んで」と頼まれたランプは普通に軽かったりとアホみたいな小ネタの連続!😂

ブルジョワな夫婦と、その友人で絶賛ニート中の青年が屋敷の中の奇妙さに触れて行くのだけど、後からやって来る成金オッサン(チャールズロートン)とコーラスガールのハイテンションコンビが更に場の空気を掻き乱す。輝かしい過去の栄光が衰退してしまった姿を体現する家の中で、戦争に打ちのめされた者が世を憂い自由を求め、資本主義的価値観によりアイデンティティを剥奪された者たちが本来の自身の姿を求める。とはいえニートサイコー♫展開は流石に笑っちゃう!🤣

ゲイを公言しているホエール監督は、後の『フランケンシュタインの花嫁』と同様に本作でもクイアな内容を採り入れている。102歳の父親を演じる俳優が女性というのもそう言った意味合いなのでしょう。支配的であった旧来的価値観の消滅と、自由に対する希望、そして表立って描くことは時代的にできなかったであろう監督自身のパーソナルな要素を盛り込み、『フランケンシュタインの花嫁』で割と露骨に花開かせるあたり、ホエール監督の表現への挑戦が見え隠れしてて面白い!

正直、ホエール監督の他作ほどの良さは感じなかったけれど、ジャンルの金字塔としての威厳みたいなものは感じた。色んな事柄が後世の作品に影響を与えていると思う。
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