みつば

或る殺人のみつばのレビュー・感想・評価

或る殺人(1959年製作の映画)
4.0
これはすごい。

ビーグラーは検事を辞め弁護士に転身したが、稼げる仕事が入ってこない。ある日、妻ローラをレイプされ、その犯人クウィルを殺害した陸軍中尉マニオンの弁護を引き受けることになった。
裁判は思わせぶりな態度をとるローラがクウィルの愛人だったのではないかという方向に進んでいく。

2時間40分という長さですが、それを感じさせないとても濃厚な作品でした。
法廷劇は単調になりがちだし、途中で疲れてしまいあまり得意ではないのですが、時折出てくるユーモアあるセリフがいいアクセントになっていて、どのセリフにも惹きつけられる。
無意味なジョークはなく、浮いた感じが一切ない。

原作の小説は実際の事件が元になっているそうですが、映画になった本作は、脇役含め俳優と役がぴったりはまっていてとてもリアルです。
ジェームズ・スチュアートとジョージ・C・スコットの演技が実に素晴らしく飽きさせない。
法廷での対決は違和感が一切なく、勝つためにあらゆる角度からお互いを攻め立てる姿には圧倒されます。
このジョージ・C・スコットのダンサー検事の威圧感は、全然勝てる気がしない。
そしてローラ役リー・レミックが本当に美人。ローラは襲われたわりにヘラヘラしてるし、かと思うと突然真面目になるので、見てる側は彼女に踊らされ、事件の真相が最後まで分かりません。

タイトルバックはソウル・バス、音楽はデューク・エリントン(本人も出演)でおしゃれなジャズが作品にメリハリを持たせています。
3歩先という感じのセリフがたくさん出てきますが、どれもその場にしっかりはまっていて驚くばかり。
特にビーグラーのセリフは物事を冷静に捉え、人間をよく理解している感じだし、彼の相棒で元飲んだくれパーネルも、飲んだくれだったとは思えないことを時々言ったりして不思議な存在感を醸し出しています。
彼も本当は弁護士の仕事が好きなんですね。

"世界はウィスキーが入ったグラス越しに見た方が良く見えると思っていた。でも違ったよ。酒はやめる。いい気分だ。"
みつば

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