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ベッドかざりとほうきのtetsuのレビュー・感想・評価

ベッドかざりとほうき(1971年製作の映画)
3.9
ディズニーにおける実写とアニメの融合の歴史に興味が出て鑑賞!

舞台は戦時下のイギリス。
疎開をしてきた三人兄妹は、プライスおばさんの家に引き取られるが、実は彼女の正体は魔女見習いであった。
あるトラブルから、ロンドンのブラウン教授の元に行くことになった彼らは、空飛ぶベッドに乗って出発をするが...。

『メリー・ポピンズ』や『続ラブ・バッグ』というかつてのディズニーの傑作を生み出したロバート・スティーヴンソン監督の隠れた名作。原作は『借りぐらしのアリエッティ』の元ネタを書いたメアリー・ノートン。

オープニングから「ナチス」というワードが出てきたり、現在のディズニーからは少し想像できないシビアな設定に驚くが、よくよく考えたら『ナルニア国物語』も疎開した四人兄弟の物語であり、多少通ずる点はあったかもしれない。

ただし、ストーリーは「戦争」の匂いを感じさせる序盤から徐々にファンタジーへと移行。
戦時中という設定だからこそ、夢の様な映像や設定が際立ち、作品世界内での「辛い現実からの逃避」という役割でファンタジーが使われていたようにも思う。

ディズニーならではの映像表現、単純に当時の技術でどうやって撮ったの?というシーンも多かったが、特に印象に残ったのは中盤のダンスシーン。
人種関係なく多国籍の人物たちが歌い踊る場面は、説教臭くならずに自然と世界平和を説いているように感じた。

まんま『2001年 宇宙の旅』のトリップシーンと被るベットが飛行するシーンの主観映像や、ナブンブ島のシーンで登場するアニメ、『メリー・ポピンズ』のシャーマン兄弟が作曲した音楽*も本作の見所。

*そのため、劇中の楽曲には『メリー・ポピンズ』の"長くて言いにくいあのフレーズ"とも似た「アストロスの呪文」の楽曲が登場する。

しかし、意外なのは散々「魔法や夢を信じることの大切さ」を語っていた物語が、予想以上に苦い結末を迎えること。
それまでひた隠しにされてきた戦争という設定が表面化するクライマックスと、否が応でも現実に向き合わないといけなくなるラストには複雑な気分になった。
流れる愉快な音楽と対照的な結末に、一種の不気味ささえ感じてしまった。

というわけで、
ディズニーらしからぬ「戦争」というテーマに向き合った異色ミュージカルとなった本作。主演のアンジェラ・ランズベリーさんのことを覚えておくと、『メリー・ポピンズ リターンズ』をより楽しめるので、時間のある方にオススメです。



P.S
ニコニコ動画で「空とぶベッドと魔法のほうき」と検索すると出ます。
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