YOK

ロープのYOKのレビュー・感想・評価

ロープ(1948年製作の映画)
3.8
オープニングが終わってすぐに人が一人殺されてしまう、まるで火曜サスペンス劇場のような始まり方、好き。

あらすじにもあるように犯人は2人。ブランドンは人を一人殺しているのにあっけらかんとしていて淡々としている。もう片一方のフィリップは殺した次の瞬間からパニック。落ち着かないし騒ぐしで、1度深呼吸した方がええで…って突っ込みたくなる。

そんな死体を箱の中に隠したままパーティー開くの、あまりにもサイコパス。やって来たゲストたちも「なんか変じゃね?」ってしきりに言うもんだからフィリップ君が大慌てしちゃって、さぁ大変。

どこでカット割ってんの?くらい綺麗に繋げてくれているワンカットワンシーン風の映画すごいなぁってシンプルに感嘆した。

同じ家の中の3部屋くらいしかシーンがないのでまるで舞台を見ているかのような雰囲気もあって、まるで目の前で作品が繰り広げられているかのような、そこに自分がいるかのような感じすらした。(これが没入感ってやつ???)

ゲストのうちの1人が鋭くてフィリップを問い詰めるシーン、フィリップが動揺しすぎでこんなん誰でも怪しいと思うんじゃねえかってくらい怪しくて、本日二度目の「落ち着いて1度深呼吸しろよ…」って言葉が漏れた。

給仕さん?お手伝いさん?のおばあちゃんが誰よりも鋭いというか、女の勘的な感がバリバリに働いているように見えた。

作品の中でも時間の経過が分かるように背景の空の色が変わっていくのが良いなって思った。真昼間から夕方、夜に変わっていくのがいい感じ。(急激に真っ暗になったりしたけど)

フィリップ、なんでこんなに小心者なのに犯罪に手を染めちまったんだろ?って動機がずっと気になって仕方なかった。ブランドン!ブランドン!ってめっちゃブランドンの名前呼ぶ。最初から最後までフィリップの言動がおかしすぎて笑っちゃった。

配役が逸材で、ブランドン役のジョン・ドールは狡猾そうで弄る悪そうに弧を描く口元が印象的な見た目。フィリップ役のファーリー・グレンジャーは少し幼くて他のメンバーに比べたら背が低く神経質そうに眉間に皺を寄せがち。
今作で問題を解決する役どころのルパート役のジェームズ・スチュアートは大変に冷静で且つ賢そうですらっとした体躯がイケメン過ぎた。
みんな違ってみんないい!

兎にも角にもフィリップが馬鹿すぎてずっと凄かった。たぶんフィリップって浮気したら直ぐにバレるタイプだよね。奥さんに「最近帰りが遅い日が続くわね」って言われた日にゃ「やっぱりバレてたんだ!君は気づいてるんだ!バレてた!バレてた!ブランドン!助けてブランドン!」ってなるタイプだと思う。

ラストのルパート、何してんねん気でも触れたか?と思ったら警察呼ぶ手段で笑った。他に方法あったのでは?(フィリップとブランドンも少しは抵抗しろよ…)

とてもレトロで今この時代にそのまんま作ったら「全体的に荒い!」って怒られちゃいそうだけど、何故だかとてもよくできた映画だと思いながら観ることが出来た。

とりあえず良くも悪くもフィリップが最高に印象に残った。
YOK

YOK