つのつの

ロープのつのつののレビュー・感想・評価

ロープ(1948年製作の映画)
3.8
サスペンスの神様アルフレッドヒッチコックが、「全編ワンカット撮影」に挑戦したことで有名な作品。
昔の映画なので、長時間撮影することがフィルムの特性上無理だったらしく、所々「黒繋ぎ(人物の背などにズームしていって一瞬画面が真っ暗になる間を作り、カットを繋げている)」をしていましたが、それでもワンカット撮影≒超長回し撮影ならではの面白さが存分に出ています。
まず主人公の殺人者2人の焦りがかなり切羽詰ったものとして理解できる。
例えば殺人を犯してしまったことによる動揺を必死に抑えようとしている時に、誰かが訪ねてくるという展開。ここでのじりじりとした焦りや緊張による徒労が、長回しならではの連続性を持って描かれるため見ていてとてもハラハラする。
また、画面の前の方で2人の人物が話している会話の内容を聞いた画面の後ろの方の人間がドキッと反応したりと、物語も同時進行性を持って進んでいます。
この部分も非常にスマートな語り口だし見応えもありました。
全編長回しかつ密室劇ともなれば、舞台劇を見せられているような退屈さを危惧していたのですが、そこはさすが巨匠ヒッチコック。手法に溺れることなくしっかりと映画的面白さを用意していました。
それでいて(技術的または物語の進行的にどうしても必要があってカットを割っている所以外で)長回しの最中、明らかに意図的にカットが割れる瞬間がありました。
そのシーンがどういう場面だったかを思い出すとまた味わい深いです。

あえて言えば主人公2人の「厨二」的発想による殺人の動機が、それ自体は良いんだけど、その結果お前自分で危機を招いてんじゃんと思えなくもなくて。
「殺人は芸術だ」とか抜かしながらそのせいでボロを出すとか元も子もない結果に終わってることもしばしばあり、そこはイラつきました。バカなの?って思っちゃう。
あと、古畑任三郎的推理役のジェームズスチュアートもさすがの名演を見せていましたが、終盤の大演説をぶつ時のセリフが「説教」臭いのも否めない。
別に、殺人者の計画が失敗に終わるのは良いんだけどね、。

しかし、この当時としては長回しという枷を設けた非常に実験的であったはずの作品を、見事にスリリングな娯楽作品として成立させているのに、ヒッチコックの底力を感じます。
面白かった!
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