深獣九

デスプルーフ in グラインドハウスの深獣九のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

 イカれた映画(ブツ)だったぜ。流石タランティーノとしか言えない。最高にぶっ飛んでたぜ。

 主人公は、デス・プルーフ(耐死仕様/スタントシーンで使用する)の真っ黒な車で女をぶち●すのが趣味の男、スタントマン・マイク。映画は2部構成。第1部の舞台はテキサス州オースティン、第2部はテネシー州のレバノンだ。アメリカの地方都市。つまり田舎。どちらも、マイクが狙いをつけた女の子たちを襲うだけの話。1部では相手を一瞬で殺戮する。だが、第2部では相手の女の子たちから反撃に合い、ボッコボコにされる(決まり手は後ろ回し蹴りと踵落とし)。第1部の展開から、これを想像することはかなり困難。タランティーノに脱帽だ。『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を思い出した。

 さて、この映画に哲学は内包されていないだろう。だから、小難しいことは考えず、好きなところだけを紹介できる。ああ、素敵。

※ネタバレ満載ご容赦



◯スタントマン・マイク
 けっこうなジジイだが、味わい満載であやしい色気をふりまいている。が、実はただの狂人。ちょっとした仕草がキモい。最高。キモオヤジ選手権では、我らのニコラス・ケイジと常に1・2を争う。

◯ビッチな女たち
 まずは、事件が起こるまで延々と続く女子トーク。なかでも1部は、湖畔の別荘でバカンスを過ごそうとする女の子たちのキャッキャウフフが、かなり高いビッチレベルで繰り広げられる。裸や濡れ場はないものの、逆にエロい。セクシーなダンスや思わせぶりのセリフ・唇がエロい。タランティーノの趣味が尊い。
 キャッキャウフフは、物語のクライマックスまで続く。そして残り数分、彼女たちは一瞬にして地獄へ。モンスターマシンに時速360kmで正面衝突され体はぐちゃぐちゃだ。このカタルシスといったら。タランティーノ、若い頃の歪んだ女性関係がこのシーンを生み出したのだろうなぁ。いい経験したな。しらんけど。

◯獰猛な女たち
 対する第2部の女たちは、映画のスタントマンら。マイクに襲われ命を落としかけるが、間一髪無事。そして、やられっぱなしじゃない。復讐を果たそうと、逃げたマイクを追いかける。
 見どころは、マイクと彼女たちのカースタントアクション。追いつ追われつ、獲物と狩人が入れ替わり、車をバッキバキにしながら壮絶なチェイスを繰り広げる。ボンネットにしがみついたゾーイにハラハラだ。
 そして攻守交代。マイクを追いかける女たちが、とにかくかっこいい。こんな目にあったらメソメソしながら通報するしかないと思う。だが、彼女たちは違う。鉄パイプを拾って車に飛び乗りアクセル全開。土埃とタイヤの煙を巻き上げながら追いかける。漢前にもほどがある。
 クライマックスは前述のとおり。マイクをタコ殴りタコ蹴りにしてフィニッシュ。なんという気持ちよさ。最高だ。

◯クールでおしゃれなカット
 タランティーノらしい、クールでおしゃれなカットが、この映画にも満載だ。

・ジャングル・ジュリアの部屋のポスターと同じ格好でくつろぐジュリア。
・尿意の限界を迎え股間を押さえて小走りするアーリーン。
・客の女の子に手を出しまくるバーの店主(タランティーノ)。
・保安官に悪態をつくクールな女医。
・急にモノクロに変わる画面(その後カラーに戻る。安いフィルムという演出か)。
・モノクロからカラーに戻った瞬間の色彩。
・ムスタングのボンネットに腰掛けブーツを履き一服するアバナシー。
・衣装(チアリーダー)のまま遊びに出かける天然ドジっ子リー。
・カーチェイスと牛。
・はしゃぎながらマイクを追いかけるキムたち。
・ごめんなさいごめんなさいと命乞いする情けないマイク。
・途中で飛んだり乱れたり傷だらけの画面。
・女の子たちがただ飯を食うだけのシーンもおしゃれ。


というわけで、めちゃめちゃタランティーノを楽しんだ。いい。こういうのもいいよね。さいこーだった。
深獣九

深獣九