垂直落下式サミング

北斎漫画の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

北斎漫画(1981年製作の映画)
3.5
なぞ多き浮世絵師、葛飾北斎を描くエロティックロマン。
緒形拳がエキセントリックで人でなしの芸術家を演じており、前半はまさに怪演と呼ぶに相応しい気迫に満ちた形相で絵描きパフォーマンスをする。
後半で、田中裕子・樋口可南子が惜しげもなく脱ぐ場面が有名で、春画のモデルとなって大タコと絡んでいる。ここがやたら長いし、足の一本一本が艶かしくフェティッシュに蠢いている様子が、キテレツでおかしい。北斎の作品として有名な「富嶽三十六景」ではなく、そこから晩年まで驚異的な省略をして、教科書にのせられない「蛸と海女」のほうが真に傑作だとして見せ場にしてしまう。なかなか振り切った作品だ。
あの絵にはセリフがあって、本作では、じじいの緒形拳が描きながらセリフをつけていく描写があるのだけど、「あうあう」だの「ぐちやぐちや」だの、ほとんどが女のあえぎ声とタコの触手が皮膚を這うときの効果音だ。今のエロ漫画と何もかわらないので、現代語訳が必要ない。
春画や艶本は幕府によって取り締まられていて違法に取引されていたのに、製作には最高の技術が使われていた。当時の浮世絵師のビッグネームがエロ絵にここまで執心しているのだから、触手凌辱は日本の伝統であることがわかる。なんだこの異常な民族。