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劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 七夜の願い星 ジラーチのめるのレビュー・感想・評価

3.8
1000年に一度7日間だけ夜空に現れる千年彗星、それと同時に目覚めるジラーチ、最後の夜には願いが叶う───


この設定だけでも惹き付けられます。
宇宙、彗星、1000年、願い事…どれを取っても壮大で美しい要素が散らばっています。

こういう宇宙を題材にした作品というのは、一歩間違えれば本当に何の話か分からなくなったり、宇宙という題材を生かしきれていなかったりで失敗しやすいものだと思うのですが、この映画は、題材とテーマを上手に結びつけることができている作品だと思いました。密接に絡み合った宇宙×時間の関係を表しているのがまさにこの映画だと思います。

そして、なんと言ってもこの映画の魅力を最大限に引き立ててくれているのが、主題歌「小さきもの」です!
まさに名曲という名にふさわしい曲だと思います。この曲を聴くだけで、この映画のシーンが脳裏に浮かび、宇宙の壮大さ、生き物の儚さを感じることができるのです。
これを歌っているのが林明日香さん。当時14歳の少女というから驚きです。今年の映画でもこの時と変わらぬ歌唱力を発揮しています。


本編の感想も書いておきます。
今回の主人公はサトシというよりもマサトでした。メインと呼んだ方がいいかもしれません。(『マナフィ』ではハルカがメインになっているように、AGの劇場版はサトシの仲間が魅力的に描かれていて良いなぁと思います。タケシがメインの映画はないですが、無印からの安定のキャラクターで、いるだけで安心します。)

まだ幼くて自分のポケモンを持つことができないマサトだからこそ、ジラーチと友達になることに心からの喜びを感じて、最後の最後まで寄り添っていけたのだと思います。ジラーチと過ごす時間を一秒たりとも無駄にしたくない、少しでも一緒にいて遊びたい、と強く願う気持ちがマサトだからこそ強く伝わってきました。

ジラーチが眠りについてしまう日の夜、悲しむマサトは「こんな思いをするくらいなら、会わなきゃ良かった」と言うのですが、それが最後には「きみに会えて本当に良かったよ」という言葉に変わります。この気持ちの変化がとても良かったです。

私のお気に入りのシーンはサトシとマサトが湖のそばで会話をするところです。ジラーチが次に目覚めるのは1000年後だと嘆くマサトにサトシが言う言葉が好きです。
「ジラーチにとって眠っている1000年は一瞬かもしれない…ってタケシが言ってた。でも、こうして俺たちと旅をしたのは違うんじゃないかな」
AGのサトシはお兄さんだなぁって思います。

私が一番好きなシーンは、やっぱりラストのマサトとジラーチの別れの場面です。
ジラーチがサトシたちの願いを叶えるのではなく、サトシたちがジラーチの願いを叶えてあげるのがいいですよね。
みんなが歌う子守唄を聴きながら眠りにつこうとするジラーチ、だんだん歌う声が涙ぐみはじめるマサト、そして最後にジラーチの名前を叫ぶ、それと同時に流れ出す「小さきもの」のBGM。
………最高の演出だと思います!!!

グラードンのくだりがちょっといるのかいらないのか微妙なところですが、バトラーの考えを正すためとジラーチを活躍させるためには必要だったのだろうと思います。
でも、あれって改めてみると完全にもののけ姫のデイダラボッチと一致してますね。草木も枯れてるし。もう少し他のやり方はなかったのかな?(笑)



七夕の夜になると見たくなる映画です。この日に亡くなったジラーチの声を担当した鈴木富子さんにご冥福をお祈りいたします。
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