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ジョニー・マッド・ドッグのHKのレビュー・感想・評価

ジョニー・マッド・ドッグ(2007年製作の映画)
3.5
後に『暁に祈れ』などを監督するジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督による戦争映画。キャストはクリストフ・ミニー、デジー・ヴィクトリア・ヴァンディ、ダグベス・トゥウェなどなど

内乱中のリベリアで、主に少年兵によって編成された反政府軍デスディーラーに所属する一人の少年がいた。彼の所属する反乱軍は通称マッドドッグと呼ばれ、常日頃、強盗やレイプ無差別殺人など、非道の限りを尽くしていたのだが…

あつかっている題材からして物凄い期待した分、ちょっと肩透かしを食らってしまったような気がしてならない作品。いやつまらなくはないし、はっきり言ってある程度劇中に登場する人たちは頑張っているんだけどやっぱりちょっと足りない。

この映画におけるジョニーマッドドッグというのは、それこそ残虐非道を尽くすマッドマックスやら北斗の拳のヒャッハーな連中なんですよね。アインザッツグルッペンでもあり、戦争を理由に傍若無人を尽くす連中なんです。

その割には彼らの虐殺シーンを直接映すようなことはあまりせずに、集会などで士気を上げるシーンのみで終わらせてしまったりしてしまったのがなんか物足りないんですよね。やっぱりこういう映画で求めるのは、炎628でも鬼が来た!でもそうですけど虐殺描写なんですよ。

それをちょっと疎かにしてしまうと、やっぱりなんか物足りないな~という気はしてならない。

劇中において、飼っている豚を屠殺するかどうかで隊がもめることによってある種の軍社会のタテ社会の怖さとか集団心理の恐ろしさを描こうとするんですけど、なんかそこまですごい絵には見えず。

こういう集団心理の恐ろしさは、日本の昔の戦争映画とか佐藤純彌監督の作品とかを見ればそういう怖さはもっといやったらしく分かるのでなんかこの映画でやっていることも物足りないっちゃ物足りないんですよね。

でも、決め台詞みたいになっている「死にたくなければ産まれてくるな」というのは、それこそ近年であれば「存在のない子供たち」でも見せられるような反出生主義の考えをしっかりと出してきていてそこは良かったんじゃないのでしょうか。

エンドロールでは実際のリベリアの内戦の様子を映していますが、そちらの映像の方が本編よりも迫力があるというのは、やはり本編のパワー不足を感じざるを得ない。

もうちょっと虐殺描写を徹底してほしかった。そうすればはまったかもしれません。でも悪い作品ではないので見れて良かったのかなと思います。

ちょっとスタイリッシュに撮りすぎたのが残念ですね。もうちょっと外連味たっぷりに撮ったほうが良かったかな。
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