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忠臣蔵 櫻花の巻菊花の巻のshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

忠臣蔵 櫻花の巻菊花の巻(1959年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

上映時間183分と長めであるが、もっと長くてもいい気がしてくる忠臣蔵の恐ろしさ。もっと観ていたい。中毒性が高すぎる。灰色の自分の日常からしばしの逃避行。総天然色フルカラー元禄時代の傍観こそ私の願い。

忠臣蔵というと吉良がとにかく極悪、という節がなきにしもあらずであるが、本作では浅野内匠頭陣営の至らなさも描いている気がして良かった。浅野内匠頭に堪え性が無かっただけで済ますと何だか寂しいもの。
天皇の勅使をもてなす役目という大役を担ったにも関わらず浅野内匠頭陣営は認識の甘いところがあったのであろう。浅野内匠頭が若いため、当の本人が未熟なのは仕方ないとしても参謀役の側近達があまりにも不用意な気がしてならなかった。まぁ、それにしても吉良の性格が悪いことと強情っぱりは救いようないが。松の廊下であんだけ謝って許さないって人格に難ありすぎ。

で、浅野内匠頭がちょっと頼りないという認識を自分は持ったのだが、そういった頭首がなにゆえあそこまで家臣達に愛されたのか?やはり偉そうぶったり、弱者を虐めたりしない天晴れな御仁だったということであろうか。本作のエピソードで城の柱への戯れ彫りの話があり、大石内蔵助が思い出し泣きをする。小さい頃からの関係であるため、もはや肉親同様の関係だったというのも伺える。

忠臣蔵の見所の1つと自分が思う大石内蔵助への家臣達の信頼の揺らぎを本作では取り立てて描いていなかった。大石に対して誤解が生じそうになると(遊女遊びとか)割と直ぐにフォローが入り、目立った混乱がなかった。なのでヒヤヒヤすることが少なかった。

観る忠臣蔵観る忠臣蔵のどれも、自分は堀部弥兵衛がたまらなく好きになるが、本作も漏れなく弥兵衛最高だった。薄田研二、味のありすぎる顔である。

討ち入り先の間取り把握の任務を美空ひばりが担うが、敵陣営にスパイを住み込ませるというのは自然で良かった。職人を突然間取り確認に向かわせたり、夜に忍び込むなど無理のある映画もあったので、本作偉いと思った。

忠臣蔵に登場する女性はどの御仁も肝っ玉が座っており、浅野内匠頭夫人もりくも堀部夫人も毅然としたものである。りくと主税の別れシーンには思わず目頭が熱くなった。堀部夫婦の別れシーンでは弥兵衛、邪魔すんな!と思った。

堀部安兵衛が枡で酒をぐぐぐぐーっと一息に飲み干すシーンの男らしいこと男らしいこと。

昔の人は江戸から赤穂まで走ったり、歩いて行っていた。当たり前だけど凄い。だから情報伝達にも日単位でラグが発生する。今だと、電話、メールだものね。うーむ、凄い。

複数の忠臣蔵を観ていると、討ち入りのシーン1つとってもそれぞれ違いがあり、観ていて楽しい。本作では討ち入りに向かう時、雪がぱらついていて自分の好みだったが、隊列がそれほど整然としてなくてガッカリ。軍隊ばりに整然としていて大げさにざっざっざっざっと足音を立てているのが好きだ。討ち入り中、室内の明かりを美空ひばりが行うというのは素晴らしかった、ナイスアイデア。吉良を見つけた後の人物確認にて傷で確認せずにこれまた美空ひばりにさせるというのもより確実でグッド!やはり、女性を住み込ませるという案は利点が多いようだ。

日本の12月が街中クリスマス一色ではなく忠臣蔵一色になればいいのにと思わずにいられない。そうであれば自分みたいな河童でも12月を楽しめる気がする。12月14日の夜に一億総討ち入り。「吉良はどこだーっ!」と絶叫しながら、道玄坂ラブホ街にて行列を作るカップル達の横を走り抜けたい。
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