オトマイム

グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独のオトマイムのレビュー・感想・評価

4.0
ファンには至福の作品、グールド入門者には最高の手引となる作品。とにかく何が嬉しいって、至近距離で鍵盤上の手の動きを見られること!これは映像ならではの醍醐味。もちろんこれは他のピアニストでも同じ事が言えるが、彼の演奏を間近で見ることは格別のカタルシス。

ある意味エキセントリックな、それでいて繊細な演奏はCD等で聴いただけでも心を掴まれる。そしてそれを紡ぎ出す神技的な運指を目の当たりにするとその奇跡的な音の連なりに打ちのめされてしまう。

演奏用のマイ椅子をいつでも持ち歩き、手を守るために真夏でも手袋をはめ握手も拒否。そんな奇人変人エピソードもたくさん。クラシックピアノ界のアイドルであり異端児でもあった彼は極端に友人が少なく孤独だった。孤独は天才芸術家の宿命なのかも知れない。

晩年のエピソードは悲しい。幸せに人生を終える天才は少ないのだろうか。それでも磨かれた原石の粒が次々と零れ落ちてくるような彼の演奏が今、映像で観られるのは、心踊る幸せな体験であることは間違いない。