Jeffrey

世界の始まりへの旅のJeffreyのレビュー・感想・評価

世界の始まりへの旅(1997年製作の映画)
3.0
‪「世界の始まりへの旅」‬

‪冒頭、"己のカオスの主人となれ"のニーチェの言葉の引用。

車に乗る数人の男女。会話が弾み道路を走る。
サラエボ、現代の黙示録、山奥の伯母。今、ポルトガル最北端へのルーツを辿る追憶のドライブが始まる…

本作はマノエル・デ・オリベイラ監督がマルチェロ・マストロイアンニ主演にした97年のドラマで、マストロイアンニと監督が最初で最後の仕事をした作品らしく、

この度初鑑賞したが、田舎町の美しい風景や車に取り付けたカメラの映像が目立つ面白い演出は良かったのだが正直退屈な1本だった。

そもそもオリベイラの作品はほぼ観てなくて、どんな手ごたえを感じれる作家かまだよく掴めていないのが現状だ。

さて、物語は4人の男女が車に乗っている描写から始まり、そこでは会話劇がスタートされている。

車内では自分の思い出を語り始め、古びた彫像を車の窓から見つけ少年時代にグランドホテルだったと言う廃墟を皆で歩き、少女と兄の思い出を語り始める。

やがて父の物語へと会話は移っていき、父が14歳の冬に家を捨てて移民となった事実が分かり始める。

そして山奥の寒村を尋ねポルトガル語がわからない彼らとそこに住んでいる伯母との話に変わる。

そして物語の終盤は一家の墓地を訪れて別れを惜しむことになる…と簡単に言うとこんな感じなのだが、監督なりのロードムービーをポルトガル北部のドキュメンタリーを感じさせるような感覚で撮影しているのと現代音楽を代表するスネスのピアノの音が響く感じはとても良い。

どうやらこの作品は監督本人の少年時代の記憶の旅が前半に付け加えられ、4人の登場人物によるポルトガルとスペインの国境を流れる川の河口から上流の険しい山奥で生活する人々の村への追憶の旅が展開されている様だ。

これを聞けば納得する話だが、やはり退屈である。

それにしても血をめぐる対話やタイトルについている"世界の始まり"の土地で日常生活する人々の独白は見ごたえがあったし、この映画を通して文明が見捨てたものは何かを悟らしてくれた。‬良作だ
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