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クリムゾン・タイドのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

クリムゾン・タイド(1995年製作の映画)
4.3
ロシアの過激な国粋主義者が軍の反乱派勢力と結託し、シベリアの核ミサイル基地を占拠した。
アメリカと日本が核攻撃の危機にさらされ、米海軍の原潜アラバマに出撃命令が下った。
歴戦の叩き上げのフランク・ラムジー艦長(ジーン・ハックマン)と、ハーバード大卒のエリートであるロン・ハンター副官(デンゼル・ワシントン)は、核に対する思想で真っ向から対立する。
目的海域に達し、敵潜水艦の影を捉えたアラバマは臨戦体制に突入。
ペンタゴン(米国防総省)からの通信が入ったその時、敵の魚雷攻撃が艦をかすめて爆発した。
通信は途中で途切れ、ミサイルの発射か中止か、はっきりしない。
即時攻撃を主張するラムジーに対し、ハンターは命令の再確認を強く求める。
艦内に異常な緊張が漲り、艦長への忠誠心か副官のモラルに与するか、乗組員たちも激しく揺れる。
ハンターはラムジーの命令を服務違反として指揮権を剥奪、彼とその一派の将校たちを監禁した。
再度、敵艦と交戦したアラバマは損傷し、甚大な被害が出る。
ハンターは通信の回復を急がせるが、その隙にラムジー艦長は連絡将校ジマー(マット・クレイヴン)、ハンターの長年の親友で武器将校のウェップス(ヴィゴ・モーテンセン)らと実力で指揮権を奪回すると、ハンターや艇長のコッブ(ジェームズ・ギャンドルフィーニ)らを逆に監禁した。
だが、ハンターも脱出し、発射を寸前で回避しようとする。ラムジーの銃口がハンターに向けられた時、通信が回復。ラムジーは再確認のため、3分間の猶予を与えたが、命令はミサイル発射の中止だった。
かくして核戦争の危機は回避された。
原子力潜水艦アラバマを舞台に、核戦争の危機を目の前に、敵の先手を撃つための核ミサイル攻撃を命令が不完全なのに、最初の命令通り核ミサイルを発射するかどうかの潜水艦アラバマの艦長ラムジーとハンターの対立を描くサスペンスアクション映画。
「最新の命令が不完全な場合は、最初の命令通りに実行すべき」というラムジー艦長と「最新の命令が不完全な場合は再度確認してから実行すべき」というハンター副長の対立は、海軍一筋の叩き上げと士官学校にハーバード大学を卒業したエリートの対立というだけでなく、「戦争の唯一の解決策は敵の殲滅」というラムジー艦長と「核戦争が現実のものになっている現在は戦争を避けるための最小限の戦闘であるべき」というハンター副長の戦争に対する考え方など、様々な違いがぶつかり合い、潜水艦アラバマ内部の反乱につながる展開を、潜水艦アラバマ内部の火災に対する対処やミサイル攻撃訓練での対立を絡めて描いているので、潜水艦という閉塞的な空間でのサスペンスにリアリティーがあり、よりスリリングなサスペンスアクションとなっている。
クエンティン・タランティーノが、ノンクレジットで脚本に参加しており、潜水艦の下士官が「本当のシルバーサーファーは、ジャック・カービー作のシルバーサーファーか、メビウス作のシルバーサーファーか?」で喧嘩するシーン、壊れた無線システムを修理する下士官にハンター副長が「スタートレック」の例え話でやる気を出させるシーン、クライマックスのラムジー艦長とハンター副長がにらみ合いになる中で敵対派閥同士が銃を突きつけ合うシーンで、緊張感のあるサスペンスの中でキャラクターの性格を浮かび上がらせるユニークなシーンに、仕上がっている。
デンゼル・ワシントン、ジーン・ハックマンの主役の演技ももちろんだが、ヴィゴ・モーテンセンやジェームズ・ガンドルフィーニの演技も、見所。
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