シズヲ

プラダを着た悪魔のシズヲのネタバレレビュー・内容・結末

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

悪魔のような辣腕編集長の下で働くことになった女性の社会人ドラマ。軽快なオープニングに始まり、メリル・ストリープ演じる編集長の畳み掛けるようなキャラクターがバトンを繋ぎ、そしてアン・ハサウェイ演じる主人公の奔走によって映画のリズムが形作られる序盤の小気味良さ。中盤からは激務を経て成長した主人公の環境・内面の変化、それによって限りなく肉薄していく編集長の掘り下げによって終盤の結論へと向かっていく。ドラマを交えつつも終始ポップな演出によってテンポ良く進んでいくので見ていて楽しい。

やっぱりニコニコ顔のアン・ハサウェイが超可愛い。めちゃめちゃキュート。ファッション誌編集部への就職によって綺麗に、お洒落に変化していく彼女のファッションを見ているだけでも楽しめてしまう。センス溢れる衣装設定だけでも素晴らしい。メリル・ストリープの風格も秀逸で、ストイックな貫禄を滲み出す演技は溌剌としたアン・ハサウェイと対照的で印象深い。仕事の域を越えた編集長の横暴ぶりは凄まじく、特に「ハリケーンで全便キャンセルになったけど何がなんでも飛行機を確保しろ」「ハリー・ポッターの発売前の原稿を手に入れろ」などの指示は理不尽にも程がある(『トネガワ』の兵藤会長のようだ)。エミリー・ブラントやスタンリー・トゥッチなど周囲を取り巻く脇役たちも良い味を出している。

激務の達成、仕事へのプライドの目覚めといった“成長”は主人公に私生活の犠牲を強いていく。社会人としてのレベルが上がっていくことで元々つるんでいた人間関係と次第に噛み合わなくなるという生々しさは印象的。編集長が言及したように主人公は彼女との同化を始めていて、しかし直向きにパリを夢見ていたエミリーやファッションの師も同然だったナイジェルの想いを踏みにじる生き方を否定したからこそ最後の決別に至る。そうして自分の意思で選択したことで夢を掴み、編集長からのメッセージ(そして最後の笑顔)によって今までの努力も報われるという結末が清々しい。
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