Balthazar

サラエボ、希望の街角のBalthazarのレビュー・感想・評価

サラエボ、希望の街角(2010年製作の映画)
3.5
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都、サラエボ。激烈な紛争も終結から10余年が経てば復興が進み、戦乱の傷痕は街角から消えていく。
ボシュニャク人のルナ(ズリンカ・ツヴィテシッチ)は少女期にセルビア兵に家を占領され、両親を殺されるという過酷な経験をし、現在は航空会社のCA勤務。目下の悩みは、同棲中の恋人で管制官のアマル(レオン・ルチェフ)のアルコール依存症と、なかなか妊娠できずにいること。アマルもまた、紛争では弟を亡くしており、兵士として前線にいた。酒が精神安定剤代わりだ。そんな中、アマルの勤務中の飲酒行為が発覚して停職処分を受ける。ほどなくして、アマルはかつての戦友と偶然再会する。そこから普通の人だったアマルは急速に宗教にのめり込み、イスラム原理主義の純潔思想に傾倒していく…。

アマルは、すっかり酒もきっぱり止めて立ち直ことができたが、ルナに、イスラムの女は露出の高い服を着るな、夜中に一人で出歩くな、やがて神の前で結婚を誓うまではSexしない、と何かと口喧しくなり、家族の前でも宗教の話ばかりして煙たがれる始末。

やがてアマルは自分の居場所を求めて厳格なムスリム信徒のコミュニティへ行ってしまい、二人の距離は物理的にも精神的にも離れていった。ルナはアマルのことを理解しようと努めるものの、厳格なイスラムの教理に従うことは自身のアイデンティティーを奪われるも同然、自分を偽ってまでも愛を貫くべきなのか思い悩んだ結果、ルナも今やセルビア人の土地になっている故郷へ里帰りして自分を見つめ直す旅に出る。
Balthazar

Balthazar