サマセット7

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2のサマセット7のレビュー・感想・評価

4.3
バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ2作目。
監督はシリーズ通じてロバート・ゼメキス。
主演はシリーズ通じてマイケル・J・フォックス。

前作ラストの直後、マーティ(マイケルJフォックス)は無事に1955年から1985年に帰還したと思いきや、未来に飛び立ったはずのドクがタイムマシン「デロリアン」と共に現れる。
ドク曰く、未来でマーティと恋人ジェニファーの息子が大変な窮地に立たされた!彼を救いに未来に飛ぶのだ!
半ば強引に、マーティとジェニファーはドクと共に30年後の未来、2015年にタイムトラベルする…!!

世界的に大ヒットとなった80年代を代表するSFコメディ三部作の第二作目。
今作は、面白さが減退しない稀有な続編として知られる。
今作の製作が決定したのは、第1作が公開され、ヒットした後であり、当初は続編の確たる予定はなかった。
一方、今作と次作のPart3は同時に製作され、6ヶ月の間を空けて順次公開された。
そのためか、今作単独で物語は完結しない。
今作のラストには、本編の一部としてPart3の予告映像が含まれている。

今シリーズはタイムトラベルを描いたSF作品であり、前作は作中の現在である1985年から見て30年前である1955年を主な舞台として、マーティの父母の高校時代を描いた。
今作ではマーティは、30年後の2015年、作中の現在である1985年、そして再び1955年の3つの時代を飛び回ることになる。
当初の目的は、未来の息子を救うことであるが、前作に引き続き登場するジャイアン的キャラクター、ビフのイレギュラーな動きにより生じた歴史の歪みを矯正するため、マーティとドクは過去へのタイムトラベルを迫られる。

今作の魅力は、各時代の世界やキャラクター描写の面白さ、相変わらず手に汗握るアクション、そして、前作の流れを別の視点で見ることの舞台裏潜入的な快感、優れたストーリーにある。

前作も1955年の風俗を蘇らせたディテールは興味深かったが、今作ではこれに加えて、2015年の未来描写、「もう一つの1985年」のディストピア描写といった時代の描写が加わり、世界観は大幅に拡張されている。
1980年代から見た未来予想図は、すでに2015年が過去となった今見ても面白い。
空飛ぶ車に空飛ぶスケートボード、その他ハイテクの衣服や靴などの面白アイテムの数々は、ワクワクさせてくれる。一方で犯罪が増えた郊外や未来のマーティ一家の姿は、決して未来が希望だけに満ち溢れたものではないことを予見している。
「もう一つの1985年」は、後に大統領となったトランプ氏をモデルにした大富豪が街を支配するディストピア描写で有名。今見ると、現実は映画より酷い、という感想を抱く人が多かろう。

ロバート・ゼメキス監督は後年フォレスト・ガンプの監督を手掛ける。躍動感溢れ遊び心をもった映像を生み出す手腕をもった監督だが、その興味がアメリカの歴史に向けられていたことは想像に難くない。
必ずしも希望に満ちたものではない今作のいくつかの未来描写は、暗に80年代アメリカの現状への批評や危惧の表れとも思える。
世紀末まであとわずか、という時代背景もあったかもしれない。宗教の影響の大きいアメリカではなおさら世紀末に向かう不安感は大きかっただろう。
ある意味で今作の危惧は現在進行形で現実化している。

前作で素晴らしかったスケートボードを巧みに用いたマイケル・J・フォックスのアクションは、未来の空飛ぶスケートボードを取り入れて、特撮面でもアクション面でもパワーアップ。
2015年の一連のシーンも良いが、やはり白眉は終盤の自動車と追走するシーンだろう。
ハラハラドキドキを心ゆくまで楽しめ、前作を思い出すオチもお見事。

今作のストーリーは比較的複雑であり、前作に比べて物語を読み解く面白さがさらに増している。
特に面白いのは、後半以降のとあるアイテムの争奪戦の傍ら、前作の名場面の数々を今作のマーティの視点から再び目にする展開。
タイムトラベルものの続編、という強みを最大限に活かした優れたストーリーだと思う。

異なる時代の人物や親子を、同じ役者が複数演じ分けている、というのも今作の特徴の一つ。
特にマーティ、未来のマーティ、その息子と息女(!)、過去のマーティを演じたマイケル・J・フォックスと、現在のビフ、未来のビフ、その孫、過去のビフを演じたトーマス・F・ウィルソンの熱演は光る。
ビフは今作の第二の主人公とも言える大活躍を魅せ、一貫して清々しいまでのジャイアニズムを発揮して印象深い。
老いてから若かりし自分と出会ったら、ポカポカ叩きたくなる、というモチーフは、笑わせてくれると共になかなか深い。
他方、恋人ジェニファーや父親ジョージの俳優は変更になっているが、演出、脚本、メイクなどの様々な工夫で気にならなくなっている。

マーティに、前作になかった「腰抜けと言われると我慢できない」という設定が加えられており、ストーリーを転がしやすくなっていると共に、前作と比較してややマンガ的な描写が増えたように感じられる。
また前作で見られた恋愛、ファミリードラマ、音楽ドラマといった多様なジャンルのミックスは抑制気味で、タイムトラベルものの楽しさ面白さを全力追及した作品となっている。

今作は、三部作の2作目であり、次作と同時に製作されたもので、次作に向けた伏線も張られている。西部劇のビデオゲームや荒野の用心棒のクリント・イーストウッドなど、次作を見ているとニヤリとなる。

今作単独のテーマは、作劇上は「今度は未来だ!!」と「前作の裏で何があったと思う!!??」であろう。
ストーリー全体としては「衝動的に我欲に走るとろくなことにならない」という日本昔話のような寓話として観ることが可能だろう。

今作のタイムパラドックスに関するSF的説明は、今となってはツッコミどころが多い。
一つ一つ挙げて非難するのは野暮というもの。
想像で補ったり、あえて今作の各時代をピックアップした作り手の意向を想像して楽しむのが吉であろうか。

大ヒット・タイムトラベルシリーズの、成功した続編。
ラストの展開は次作への興味を否が応でも掻き立てる。本編中に仕込まれた次作予告によって、次作への期待はMAX!!!
気分は西部へレッツゴー!!である。