てづか

旅の重さのてづかのレビュー・感想・評価

旅の重さ(1972年製作の映画)
5.0
スクリーンの中に過去の自分を見た。
辛かったときの、あの頃のわたしを見た。
でも、ひとつ自分でも驚いてることもあって。
哀れむでもなく共感するでもなく、こんなに一歩引いて古くからの友人のような気持ちでみれるときがくるとはあの時も今までも思ってなかった。

「頑張っても頑張っても人は離れていく一方じゃないの!」
と主人公が泣く場面。
その台詞そのままに思ったことが私もあった。
その実自分から遠ざけて拒絶していただけだったと今は分かる。

とはいえ、辛かったよなとも思うし、今でも全然引き戻されそうにはなることはある。
ただ、あの時と違うのは、それも含めて私の人生だったんだよなとも思うし、そしてそれは自分が投げ出さない限りはこれからもそうなんだよなとも思えるようにはなったということ。

なにも選ばせてもらっていないと思っていたけど、そのとき、何一つ選んでこなかった自分も同時に自覚して。これだけはと決意してわたしも家を出た。わたしも、旅の重さを背負いたかった。

そして、その先に色んな人と出会う。
自分の世界がどれほど狭く小さいものだったかを知る。

きっと前以上に傷ついたり傷つけたり怖かったりもしているんだけど、それこそが自分で選んだ旅の重さなのだという喜びもある。
他人との関わりの中でしか得られない楽しさもあると知る。

馬鹿な女の子の一時の気の迷いと言われたらそりゃ本当にそう(笑)
それで本当に嫌な思いをさせた人達にも、ごめんと思う。
でもそれを、「バカだったなぁ」で片付けられない時もある。
だから、「バカだったなぁ」と思える今日まで生きてみて良かったのかもしれないなぁと。
この映画を観て思った。

あとは、きっと、繰り返さないことだけだ。繰り返す手前でとどまれたら、とりあえず及第点くらいなんだろう。まあ私なんてどうしようもないやつだから絶対また同じことやると思うけど…笑
繰り返しそうになった時にどんな選択をしていくのかはすごく大事なんだと思う。それはきっとあの時とは違うものでなければいけないはずだから。


あと、午前中に観た田舎司祭の日記の「すべてが聖寵だ」も突き詰めればそういうことなのかなと思った。合ってるかは知らないけど、観ている最中にふたつの映画が繋がった感じがあった。

20歳の原点と似たような映画でもあるけど、あの時に思ったこととはまた違う感じの気持ちを抱いた。
てづか

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