BOB

無法松の一生のBOBのレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
3.8
稲垣浩監督が2度の検閲に見舞われた無念の同名作品(43)を三船敏郎主演でセルフリメイクし、ヴェネツィアで金獅子賞を受賞した名作。

明治から大正にかけての北九州小倉。荒くれ者の人力車夫・松五郎が、良き友人となった矢先に急死した陸軍大尉の妻・良子と幼い一人息子に目をかける。

「俺の心は汚い!」

初稲垣浩監督作品。オリジナル版未鑑賞。

粗野で無骨だが根は正直で人情に厚い無法松・松五郎の一生を通して、日本(九州?)男児たるやどう生きるべきかを示した古き良き昭和の人情劇。義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義。"男だから〜女だから〜"という考えは性差別とみなされる世の中になったが、それでも武士道精神にも通ずる彼の生き様には少なからず感銘を受けるものがあった。

色彩豊かな映像が本当に綺麗。中でも、松五郎が伝統の小倉祗園太鼓で人々を魅了する夏祭り🎆シークエンスや、ネガの色反転が施された幻想的な走馬灯シーンに心が華やいだ。

三船敏郎の魅力が光る。未亡人となった良子への恋慕と、故陸軍大尉への忠義、礼儀、恩義の間で揺れる天涯孤独な男・松五郎を、ユーモアを交えながら大胆かつ繊細に演じている。松五郎の"黙って見守る"純愛劇は、現代の価値観からすると理解し難い古風な恋物語ではあるのだが、自分としては日本人らしい律儀な心に胸を打たれた。

高峰秀子の、古き良き日本人女性らしいおしとやかな美しさにも心惹かれた。鶴の一声で場を収める、"日本のおじいちゃん"こと笠智衆も良い。笑

人力車の車輪🛞が、松五郎の命の時計🕰️のように回り続ける。

日本の四季折々の行事や学校行事、当時の庶民の生活風景が見られるのも魅力。凧揚げ。運動会の棒倒し(高校の体育祭でやった。懐かしい!)。飛び入り参加有りの徒競走。豆撒き。学芸会での唱歌"青葉の笛"。夏祭り。学校対抗の喧嘩。祇園太鼓。花火。

阪東妻三郎版も観てみようと思う。

353
BOB

BOB