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無法松の一生のrpmu90377のレビュー・感想・評価

無法松の一生(1958年製作の映画)
3.8
小倉生まれで玄海育ち
口も荒いが気も荒い
(作詞:吉野夫二郎)

ご存知、「無法松の一生」の映画版。原作は昭和13年に発表され、その後、舞台、映画、テレビ、歌謡曲などでたびたび取り上げられている。本作は稲垣浩監督が昭和18年に発表した作品を昭和33年にセルフリメイクしたもの。

小倉の車夫・富島松五郎は喧嘩を始めると手が付けられなくなる荒くれものだが、情に厚く自分に非があると気づけば素直に反省し謝罪する純情な熱血漢であった。ある日、怪我をした少年を助けたことがきっかけで陸軍大尉・吉岡の家に出入りするようになり、吉岡が病死すると、残された妻と息子に献身的に仕えた。松五郎は未亡人にひそかに恋心を抱いていたが、最期まで口に出すことはなかった。

三船敏郎が無法松を圧倒的な存在感で生き生きと表現している。無学ながらも少年・敏雄に男の美学を大胆に教え、未亡人よし子には想いが伝えられず借りてきた猫のような態度で接する。この強弱のつけ方に人間臭さが出ていて好感が持てる。見せ場となる博多祇園太鼓のあばれうちのシーン、どれだけ練習を積んだのだろうか、豪快なばちさばきに全く違和感を感じない。

少年時代の松五郎が遠く離れた場所で働く父親に会いに行くくだり、真夜中の森の中をさまよい歩き妖怪に付きまとわれるシーンはファンタジー感があふれていてまるでディズニー作品をみているようだ。全編に流れる團伊玖磨の音楽も無法松の世界観とかけ離れた洋風のものだが、なぜか違和感を感じない。リメイクといっても単なる撮り直しにならないよう斬新な手法を取り入れたものだろう。
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