チーズマン

マイライフ・アズ・ア・ドッグのチーズマンのレビュー・感想・評価

4.0
午前十時の映画祭にて。

少年の、あと少女もと言っていいでしょうその成長を多幸感溢れるタッチで描いていた。
でもそれがなかなか独特で、主人公の少年イングマルを立て続けに襲う2つの悲しみはこの作品の多幸感とは真逆のかなり厳しい現実なんだよね。
だからこの映画全体を通して描かれてるのは、子供が大きな悲しみや喪失感の中に堕ちた時の立ち直り方のある種1つの道筋案内みたいなものだと思う。
この映画のタイトルのように「僕の人生はライカ犬よりはマシ」だと自分よりも不幸なものを見つけて自分と比べてもいいし、お婆さん家で寝た時みたいに他の人の悲しみの中で自分の悲しみを癒してもいい、べつにポジティブなものだけが悲しみに対抗できる訳じゃない。
悲しみには悲しみを。

1人っきりでいるのはよくない、色んな人と過ごした方が良い。
ずっと誰かと過ごしてたらいけない、1人っきりで向き合った方が良い。
結局その両方が必要なんだというこの作品の描き方は、個人的にも経験上そうだったなあと思った。
仮にこれがどちらか片方に集中してしまうとやはり立ち直るのに手こずるんじゃないかと思う。

そうやって立ち直った後には主人公イングマルは必然的に子供から少年へと成長している、世界が前より広がってる、そのプロセスをほんと瑞々しく演じた子役(達)が素晴らしかった。
この前の細田監督の『未来のミライ』の主人公の子供の世界の中で“何か増えてしまった”という足し算からスタートする成長物語とは逆に、主人公の子供の世界の中から“何か無くなってしまうかも”という引き算からスタートするこの映画の子供の成長物語が、スタート地点が違えど結局は両作品似たような順序で主人公が自分と他者と世界の広がりを獲得していくのも面白かった。

そんなこんなを独特な多幸感溢れるタッチと笑いで描いてて印象に残る良いシーン多数、午前からなかなか良い気分になれる映画だった。
チーズマン

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