教授

ドラえもん のび太と鉄人兵団の教授のレビュー・感想・評価

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「大長編ドラえもん」映画の最高傑作と呼ばれる本作。何度も繰り返し観ているが、歳を経るごとに泣いてしまう。

まず。
冒頭からのやり取りも含め全編ツッコミどころは大変多いので作品としての完成度は色々言いたくなってしまう。
スネ夫の従兄弟の作ったミクロスという「おもちゃ」のロボット。そのテクノロジーもそうだが、資金は?というところも含めて「?」な上に、それ以上に「ドラえもん」といういつもお前らが接しているソイツが一番凄いんだがな…と思ったり。

本作では悪役がロボットであることで、劇中にあるドラえもんのセリフ「来たな!ロボットども!」ってお前もやんけ、と思わずツッコミを入れてしまう。
また「鏡面世界」に鉄人兵団をおびき出して、というアイデアは素晴らしいのだが、だったらそれ閉じれば済むじゃんとか、「鏡面世界」なら何してもいい、とか…色々凄い。
特に本作ではスネ夫が何気に残虐性を発する台詞の数々にギョッとしてしまう。

「STAND BY ME」シリーズを経てみると、どうにもその「ドラえもん」という物語の根本的な構造が無理筋であったり、歪であったりは気になってしまう。

ただ、本作はちょっとそれ以上に、良いところが群を抜いている、というところが「最高傑作」と呼べる点だと言えると思う。
それは文明論としての、人間の負の歴史を照射される形で描かれる「鉄人兵団」の姿。「神」によって創造される動機が「人間への絶望」であり、神に託された存在として「つくられた」にも関わらず人間と同じ歴史を辿り、無意識に優生思想に囚われているという暴力性。

人類へのスパイとして行動するヒロイン、リルルの揺れる心情であったり、葛藤、何より作画的魅力や山本百合子の声優としての魅力も大きいが、ドラえもん、のび太、スネ夫、ジャイアンという「男たち」とは一線を画したしずかとリルルという女性性を通したポリティカルさが普遍的な魅力になっている。

ストーリーに対してのディテールの詰めの甘さは散見されど。
少女の裸、や奥底にある「機械」であるアイデンティティの「穢れ」表現からくる女性の力強さが、ただ闇雲に戦争に立ち向かい、何故勝利したかもわからずぬか喜びするドラえもんたちの裏で、少女たちの自己犠牲によって得られているという構図自体が非常に的確な物語になっている。

全体的に歪さは否めないが、やはり今回も号泣してしまった。
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