チュン太theRelax

ドラえもん のび太と鉄人兵団のチュン太theRelaxのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

のび太さん!との呼びかけに対し我々はナンジャイ!とは言わない。しずかちゃんが切実にのび太を呼ぶのは映画版ドラえもんである場合が多い。漫画版ドラえもんではギリ人権を犯さない程度にナメられているのび太でも、映画版では優しさと正義感、素直な涙によっていつだって我々40代前半(以外の人も当然)の黄ばんだ小便のような涙を搾り取ってきたのである。
鉄人兵団ファンは俺以外にも何億人でもいるのだろうけれど、ほんの子供だった頃、機械少女リルルに出会った我々はみんな、リルルの機械おっぱいを目撃、人類とサイボーグの密な関係の可能性についてじっくりと考えたはずである。映画鑑賞後も。
結論から言うと、俺はこの映画の途中でリルルに恋をして、終わり頃には失恋した。リルルというピンク色の髪の、ロボながら人間らしい葛藤を備えた美しい少女は、唯の一度も俺をがっかりさせなかったし、もう一回言うがおっぱいもポロリ、俺の下半身ピクリ。失恋した訳は簡単であって、ストーリーの流れで、そもそもリルルはこの世にいなかったことにされたからである。いない対象に恋はできたい。あれほど好きだったリルルは初めから存在しない。しかも愛ゆえに、友情ゆえにそのような恐ろしいことになった。子供だった俺は大いに考えさせられたものだ。はじめからいないことになった美しい少女が、これほどまでにドキドキと俺の中に存在していることの不思議について。

てか、畢竟、映画は何時間かの光に過ぎない。初めから存在しないのはリルルだけではなく、映画自体もまたリルル的儚さを持っているのだ。名著、百年の孤独を読むまでもない。また、豊穣の海を読むまでもない。2時間ぐらいしかないこの映画で、子供でも十分にわかる存在の儚さに泣けばよろしかろう。
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