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ロッキー・ザ・ファイナルのsatoshiのレビュー・感想・評価

ロッキー・ザ・ファイナル(2006年製作の映画)
4.8
 『ロッキーⅤ 最後のドラマ』で完結したはずのシリーズをもう一度復活させた完結作。本作では、『ロッキーⅤ』で「立ち続ける」決意をしたものの、結局ボクシングの世界に戻ることなく、小さなレストランを開いて細々と暮らしているロッキーが、とあるきっかけからもう一度「立ち上がる」までを描いています。

 シルベスター・スタローンは『ロッキーⅣ 炎の友情』でキャリアの最高潮を迎え、星条旗を身に纏いロシアに説教できるまでになりました。ですが、その後は鳴かず飛ばずの時代が続き、既に「過去の人」となっていました。これはそのまま自営のレストランで昔の栄光を語って聞かせるロッキーの姿とダブります。

 だからこそ、彼がもう一度立ち上がる姿には涙を禁じ得ません。誰にも期待されない。でも、自分を信じてチャレンジする。これは、当時のスタローンの心境そのままだったのでしょう。実際、本作のヒットとクオリティは意外だったようです。

 そして、このような事情以外にも、息子との関係にも注目できます。当時スタローンは息子と上手くいっていなかったようです。これを考えると、息子に伝えたかったであろうメッセージも読み取れます。中盤、ロッキーは息子にこう言います。

 「人生ほど重いパンチはない。だが大切なのは、どんなに強く打ちのめされても、こらえて前に進み続けることだ。そうすれば勝てる。自分の価値を信じるなら、パンチを恐れるな」

 ロッキーは自分の価値を信じ、周りに笑われながらも、リングに向かいます。彼に勝ち負けは問題ではありません。大切なのは、自分を信じられるか。自分を信じ、最後までリングに立つロッキーの姿は素晴らしく、やはり泣ける。

 本作は予想外の大ヒットを飛ばしたそうです。これは『ロッキーⅤ』で「立ち続ける」決意をしたスタローンが自分の可能性を信じた結果掴み取ったものでしょう。

 そしてこれは、我々にも当てはまります。自分の可能性を信じろ。自分の弱さを他人のせいにするな。そうすれば勝てる。スタローンの言葉が聞こえてきます。エンドロール。「ロッキーのテーマ」にのせて、フィラデルフィア美術館の階段を駆け上がる人々が映されます。「次はお前たちだ」そう、スタローンに言われている気がして、私は涙が止まりませんでした。
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