「皆 情熱を持っていても その炎を燃やせる人は少ない」
本作は、現役を引退し、小さなイタリアンレストランを経営していたロッキーが、再びプロボクサーのライセンスを取得するために努力し、ボクサー人生最後の試合で完全燃焼を目指す物語。
有終の美を飾るロッキーとディクソンが繰り広げる白熱した試合は、必見である。
そしてこの作品は、ロッキーシリーズの6作目であり、前作『ロッキー 5』から実に16年ぶりの続編。
ロッキーシリーズ完結篇と銘打たれている本作は、脚本・監督を『ロッキー4』以来再びシルヴェスター・スタローンが務めている。
本作で遂に『ロッキー』が完結した、と心の底から思えるような素晴らしい出来であったと思う。スタローンよ、よくぞここまでの作品を作ってくれたことだ。これぞロッキーの終幕に相応しいという内容であった。
ロッキーの対戦相手が決まり、その試合に向けて過酷なトレーニングをこなし、試合に臨む。そして、リング上でロッキーと対戦相手が白熱した戦いを繰り広げる。
最後には、ロッキーのテーマと共に試合が収束していく。
なんて理想的な終わり方なのであろうか。
おそらく本作を観た後、ファンたちは、再び1作目からから順にロッキーシリーズを見直していくことになるはずだ。
本作にはそれほどの力がある。
このように本作は「始まりの終わり」であるのだ。
先述したように本作には、『ロッキー』を最初から順番にまた観たくなってしまうような魔力が込められている。
特に本作を観終えた後、1作目の『ロッキー』をたまらなく観たくなるに違いない。
なぜなら、本作は、1作目のセルフオマージュが盛大に行われているからである。
なんと、ロッキーが1番最初に試合で対戦したあのボクサーまで登場したり、ロッキーに暴言を吐いたあの不良少女が登場したり、とかなり懐かしい演出の数々に1作目からのファンは、何度も胸を熱くさせられることであろう。
ずるいよと言いたくなってしまうほど憎い演出の連続なのである。ファンの心をこれでもかとくすぐる非常に上手い脚本であった。
これぞ、ロッキーシリーズの最終作にふさわしい内容だと言わんばかりの演出には、ファンと制作者一同が完全燃焼できたのではないだろうか。
私の1番好きな場面は、ロッキーvs現ヘビー級世界チャンピオンであるメイソン・ディクソンのコンピュータによる試合である。
このコンピュータの計算による試合の勝敗は、13ラウンドでロッキーのKO勝ちであった。この試合結果に、世間では、コメンテーターを中心とした様々な議論が交わされることとなる。この試合や議論をディクソンとロッキーの2人が観ることで、自身の胸に戦いの炎をそれぞれ宿すことになるのである。
こんな試合を本人たちに無許可で勝手に世の中を盛り上げるために放送するなんて本当にアメリカらしい演出である。実際、この試合のおかげで、2人の試合が現実のものになるのだから大したものだ。かなり影響力のある試合であったと思う。
何よりもバーチャルの試合ではあるが、ロッキーが勝つところを観ることができて、私には非常に満足な試合であった。
また、本作でロッキーがボクシング引退後、「エイドリアンズ」というイタリアンレストランを経営しているというのが、妙に現実味のある話であり、個人的にお気に入りの設定である。
あんなレストランがあるならば、毎日でも通いたいと思う人はたくさんいることだろう。「イタリアの種馬」がオーナーのイタリアンレストランという洒落っ気十分のユーモア溢れるお店である所も良い。
このレストランでロッキーの話を聞きながら、ワインを飲みたいものである。
本作をもって全ロッキーシリーズを観終えることができたので、これからはようやく『クリード』シリーズを思う存分楽しむことができる。嬉しい限りだ。
現在公開中の最新作は、前評判もかなり良く、ものすごく楽しみである。早く劇場に足を運びたい。
だが、その前に『クリード チャンプを継ぐ男』をじっくりと味わうことにしよう。
次の作品も非常に楽しみである。