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ロッキー・ザ・ファイナルのシズヲのレビュー・感想・評価

ロッキー・ザ・ファイナル(2006年製作の映画)
3.9
ロッキー・バルボア、カムバック!!まさかの16年越しの復活劇。『ロッキー5』は別に最後のドラマではなかった。すっかり高齢に差し掛かったスタローンや前作との間を考えると「ここまで来てロッキー引っ張り出すのか?」感はあるが、中身はちゃんと面白く仕上がっている。マイナスの中で足掻くだけという印象が強くていまいち好きになれなかった5に比べると立派にロッキーやってる。

下地のシチュエーションは前作と同じく「故郷で隠居してこじんまりと過ごすロッキー」だけど、本作ではロッキーがめっきり歳を食っているのでその辺りも大分自然な流れに。1作目から描かれてきたロッキーの素朴な人情はますます味わい深くなっていて良い。今までと変わらぬ暖かみを持ちつつ、高齢になったことで父性の行き場を模索しているようにも見えるのが印象的。そして「どれだけ打ちのめされても前に進み続けろ」などの台詞に裏付けされた前向きな活力に只管グッと来る。老いてなお戦うことを辞めないロッキーの生き様、まさしくプラスへと向かっていく熱量そのもの。これこそ『ロッキー』の魂。

今もなお古馴染みとして付き合ってくれるポーリーにもしみじみしてしまうし、過去作から再登場したマリーやスパイダーなどの懐かしい顔ぶれもニクい。主題歌の使いどころも含めて些か懐古的ではあるけど、ロッキー復活作なので大目に見たくなる。下町で静かに暮らしていたボクサーがチャンピオンからエキシビジョン・マッチを挑まれるという内容も1作目を彷彿とさせられる。ボクシングのシーンは流石に昔ほどのインパクトではないが、それでも実際に試合形式で撮影したことによる臨場感は凄い。

マリーの息子はあまり活かせていないし、父の偉大さに苦しめられてきたロッキーJrとの和解もすんなりで若干引っ掛からないでもない。マリーとの関係性も嫌いではないけど、もう少しエイドリアンにウェイトを置いても良かったかも。ライバルとなるメイソンも「真の栄光を掴めずに燻っているチャンピオン」というロッキーと同じく成長の余地がある人物像だったのに、最終的にあまり活かされなかったのが惜しい。せめてロッキーとの試合後に何かしらのアプローチが欲しかった。

ロッキーと炎の友情を結んだアポロのことももっと触れてほしかったなあ(デュークもいるんだし)と寂しく思ったが、そのへんは『クリード』に期待だ。
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