踊る猫

ユリシーズの瞳の踊る猫のレビュー・感想・評価

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)
4.4
緊迫するバルカン半島情勢を描いており、特にラスト近くでのサラエヴォの街並みには言葉を失ってしまう。実にほろ苦いストーリーだ。政治的な知識があればもっと楽しめたかもしれないと思うと悔やまれる。個人的にはハーヴェイ・カイテルの演技と、ひとり四役を演じ切るマヤ・モルゲンスタインの色気が強烈に脳裏に焼きついた。ロング・ショットと長回しを多用したこの映画では俳優の演技力が試される。その試練を上手くクリアしているな、と思ったのだ。雪景色の中をひとり立っているハーヴェイ・カイテルが印象に残る。本当に男でも出来る人なんだな、という……列車の中で今は亡き兄弟の記憶が憑依するシーンなど、複雑な語りを採用していて三時間近くありながら飽きさせない。流石はテオ・アンゲロプロス。
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