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太陽のKUBOのレビュー・感想・評価

太陽(2005年製作の映画)
3.5
岡本喜八版の「日本のいちばん長い日(1967)」では天皇はスクリーンに顔を出さない。昨年公開された原田眞人版「日本のいちばん長い日(2016)では本木雅弘が演じていたが、あくまで登場人物のひとり。それが2006年制作の本作では、それまでタブーであった天皇を主人公として終戦直後の様子をじっくり描いているのだ。

最初は全然似ていないと思ったけど、見ている間に昭和天皇に見えてくる。口を不思議に動かす仕草。園遊会などでもよく耳にしていた「あ、そう」という独特の言い方。作品の描かれ方は見る人の政治的信条によれば、受け入れがたい人もいるかもしれないが、イッセー尾形、一世一代の演技であることは言うまでもない。

それにしても我々には知らされない皇居内での生活や執事とのやり取りなど、どのような取材に基づいて脚本が作られたのだろう? 特に米兵に写真を撮られる際の失礼なシーンや、マッカーサーとの会見のシーンなど史実と大きく違っているところもあり、残念だ。

この映画を撮ったのがロシアの監督だというのも驚き。確かに日本では作れなかった内容だ。イッセー尾形も出演するにも覚悟がいったことだろう。

「この戦争に負けた原因は、この国が傲慢だったからです」「私は、ね、成し遂げたよ。これで私たちは自由だ。私はもう神ではない。私はこの運命を拒絶した」とイッセー尾形演じる昭和天皇自らに語らせる本作。問題作であることは確か。あなたはどう見る?
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