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太陽のRのレビュー・感想・評価

太陽(2005年製作の映画)
4.2
昭和天皇裕仁を愛すべきボンクラとしてロシア人監督が描いた大変興味深い一作。昔一度見たときは、とても眠い日で、とんでもなくスローなテンポと薄暗い映像に何度も寝落ちしてしまい、まったく集中できなくて、クソおもんねーな、と思ったものだ。今回は、そういう映画だと知ってたので、ちゃんとお昼寝をして完全覚醒状態で鑑賞。すると、何とも言えないユーモアと感動に満ちた不思議な映画だった。ストーリーは、天皇がポツダム宣言をもって無条件降伏を受け入れるところから、遂には人間宣言を果たすまでをカバーしてるのだが、政治ドラマとか戦争ドラマなどの趣きは全くなく、天皇のパーソナルな心情に迫ったとても小さなヒューマンドラマとなっている。家族を全員疎開させて、防空壕のなかで孤独に暮らす裕仁は、戦時中最後の御前会議にて戦争の平和的な終結を求め、自分は神ではなくて人間だよ、と言って侍従を困らせては、いや、冗談だよ、とトボけた振りをする。普段は海洋生物の大好きな生物学者であるので、心の中では自分がまぎれもなく人間なのをよく分かってる。ほんで、基本、身の回りのこと全部世話してもらって、狭い世界でまったく浮世離れした生活を送ってるので、どうも子どものまんまの天真爛漫さをうちに秘めているようなのだ。魚みたいに口をパクパクさせたり、ぼやーんとして若干アスペ気味だったり、身長も低いしで、そんな彼をバカにするアメリカ兵たちだが、彼らとはまったく異なる関心で裕仁を間近から見つめるマッカーサー……個人的には、裕仁を演じるイッセー尾形の演技がちょっとシツコイ感じがするのと、マッカーサーの演技がビミョーなのが結構気になったのと、全体に漂うアート系な雰囲気の割に、映像がテレビドラマくさい安っぽさがあって、もうちょい高級感のある陰影があったらよかったのに、と思わずにはいられなかった。それでも、ラストシーンの再会の微笑みと触れ合いと、あっ、そう、そうそう、そうね、の応酬の至上のほっこりには心がジーンと来たけど。あと、一番最後の桃井かおりの表情には、女の怖さがみなぎってて、すごかったですね。おそらく史実を元にした部分と、完全に監督の創作した部分とが、絶妙に混在した内容になってるんやろうと思いますが、まぁよくもこんな大胆な映画を、保守でドロドロの日本で公開することができたなーと、そこにいちばんの驚きを感じる。出てくる日本人みんな頭悪そうでキモいしな笑 こういう映画を海外の人が見て、日本の誤った印象を持ってほしくないです。とか言う人がいかにも出てきそう。残念ながら、これも日本人のひとつの真実の側面であるよね。もんのすご近視眼的というか表面的というか。まぁ日本人に限ったものでもないけど。それが全体に漂うユーモアになってて、思わず笑っちゃうシーンもいくつかあった。かなり賛否わかれる映画やと思うけど、一度か二度見ておいて損はない映画だと思われます。ソクーロフって全然触れてない監督なので、何かオススメがあったら教えてください。何となしにあんま好きじゃないかもやけど笑
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