私の今年のラッキーカラーは緑色!
初エリック・ロメール!
ロメール作品を観られるのが結構貴重なので感謝。
しかも本作が監督作品初鑑賞だったのは良かったかもしれない。
ヴェネチアで金獅子賞を受賞した本作は、バカンスを通じて、ある女性の繊細な心境を描いた良作。
主人公のデルフィーヌは、はじめの印象だと独りよがりで自分勝手なよう。
自分は周りの人間とは違うし、自分のことを本当に理解してくれる人間は存在していない。
友だちはいるけれど、心の底から理解し合えるような関係ではなくて、恋人は何年もいない。
序盤から中盤にかけて、デルフィーヌは周りの人たちと何らかの形で関係を続ける。
その度に空気の読めないところ、悲劇のヒロインのような振る舞い、情緒不安定な感情など、彼女の輪郭を何となく理解しながら、ちょっとイラッともする。
本作が特に優れているのは後半からで、彼女が一人でバカンスを過ごすことになることで、彼女が何を不安に思っているのかなどが明らかになっていく。
彼女は自己肯定感が低く、自分に自信がない。
運命の人を待っているという感覚は、今の自分の価値観を受け止めてくれる人が現状存在していないことに、無意識に傷ついているから。
自分そのものは存在していていいのだろうか?
私を“女”という性別ではなく、“デルフィーヌという私”として認識してくれる人はいるのだろうか?
強情で思い込みが激しいところもあるが、それも全て自分に自信がないからと考えると、彼女に共感せずにはいられないはず。
誰かに媚びるわけでもなく、自分らしく生きていきたい。
彼女が一人を必要以上に嫌っているのは、無意識に自分が孤独であるということを認識しており、叶わなくとも誰かと共存していきたいと感じているからなんだろう。
ビーチで一人歩く彼女の周りはみんな楽しげで、まるでドキュメンタリーを観ているようだった。
こういった、自己の内面世界を外界の世界と対比させるようにしているところが、本作の孤独感をより深めるものになっており、上手いな!という印象。
ただ『緑の光線』と繋げるのは結構無理矢理な気もするけれど。笑
まあ劇中で緑色を意識させる言葉が多いし、何よりラストが素敵だからいいのだ。
前半は申し訳ないが微妙と感じつつも、後半に一気に持っていかれる。
前半は、デルフィーヌの人格を観客に描かせるために、周りの人たちとの会話を通じて彼女を表面的な部分で理解させる。
対して後半では彼女視点に変え、“デルフィーヌという私”という存在を通じ、彼女の息苦しさや、周りとの差異のせいで受け入れられていないという内向的な世界を描くという見事な作り。
これはめんどくさい女性の映画ではなくて、世間的に内向的で自己肯定感の低い人間に向けられた映画。
彼女に苛立ちを覚えるのは、本作での周りの人間が非常に優しく、観客一人一人が共感する部分が存在しているからなんだと思う。
しかし解放されたかのような緑の光線を目の当たりにした瞬間、苦悩は幸福へと変わっていくんだろうな。
一瞬であれども彼女は照らされ、自己肯定感に包まれていくはず。