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ロジャー・ラビットのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ロジャー・ラビット(1988年製作の映画)
3.8
 1947年のハリウッド。ロサンゼルスの東部のどこかにアニメーションの登場人物が住む町トゥーンタウンがあった。この町の人気者ロジャー(声=チャールズ・フライシャー)は映画の撮影に失敗し、ぼんやりして仕事に身が入らない状態になっていた。心配した社長のマルーン(アラン・ティルヴァーン)は、探偵のエディ・ヴァリアント(ボブ・ホスキンス)を雇い、ロジャーの妻で官能釣なジェシカ(声=キャスリーン・ターナー/エイミー・アーヴィング)を尾行させる。エディはインク・アンド・ペイント・クラブに行き、ジェシカと彼女の愛人だと噂のマーヴィン・アクメ(スタッビー・ケイ)の2人の信用を堕とすような写真を撮る。ところがそのマーヴィンが何者かによって殺されてしまい、ロジャーが第1容疑者にされてしまう。実写にアニメーションを合成するという当時は画期的な方法で作られた大ヒット作。制作はディズニー出資のタッチストーン・ピクチャーズが担当し、ワーナー・ブラザーズが配給。ワーナーはディズニーとのキャラクター交換により、ミッキーマウスとバッグス・バニー、ドナルド・ダックとダフィー・ダックの夢の共演があるだけでなく、どういうわけか『ベティ・ブープ』のウィッフル・ピッフル、『ウッディー・ウッドペッカー』のパパ・パンダ、ルーニー・テューンズの『幻のドードーを探せ』のドードー鳥なども参加し、さながら当時のトゥーン祭りの様相を呈す。個人的にはウィッフル・ピッフルがうらぶれた女を哀愁たっぷりに演じていたのがぐっと来る。

 だが物語の構造は1940年代を背景にしたフィルム・ノワールであり、当時の子供達に理解出来たかは定かでない。探偵事務所の私立探偵エディは弟を殺された重荷を背負い、生きている。彼はその時からトゥーンを憎んでおり、当初は容疑者となったロジャーにも救いの手を差し伸べない。だがこの事件には裏があることを知ったエディはロジャーを匿い、独自に調査を始めることになる。ロジャーの妻ジェシカ・ラビットも自他共に認めるダイナマイトボディの持ち主で、会員制ナイトクラブの歌姫というキャラクター設定も典型的なファム・ファタールとして登場する。トゥーンも実写もカラフルな色彩だが、作品全体に漂うトーンは明らかに漆黒の闇であり、陰そのものである。フィルム・ノワール的な展開でサスペンスを持続させるものの、クライマックスの種明かしにはやや拍子抜けした。トゥーン・パトロールが笑いながら次々に天国に召されていく場面の異様さはあまり見たことがないバカバカしさを誇る。緑色をした溶解液が少しでも体にかかれば、彼らはこの世から消えてしまう。クリストファー・ロイドの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでドク博士を演じながら、一方ではこんな悪役を纏っているという出鱈目さ。ラストの道具を使いまくったアクションは、限定された空間の中でバリエーション豊かにアクションを作ることが出来るゼメキスの才能が開花した場面であろう。一方では宙づりにされたカップルが溶解液の中に落とされようとしている。その一方で様々な道具を駆使しながら、エディはクリストファー・ロイドに対峙する。それは亡き弟の弔いの作業となる。
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