天豆てんまめ

トレーニング デイの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

トレーニング デイ(2001年製作の映画)
3.9
いいデンゼル・ワシントンと悪いデンゼル・ワシントン。私が好きなのは悪い方で、略して悪デン。最近作では「フライト」などもあるが、あれはダメなデンゼル=ダメデンで、悪デンの真骨頂はこの作品。見事、アカデミー賞主演男優賞を取ったのだけど、取って然るべきのど迫力。その後、監督になるデヴィッド・エアーが脚本、骨太な演出のアントニー・フークアが監督でリアルかつ逃げ場のない緊張感が続く作劇は見事。

ロスの麻薬捜査官のベテラン刑事の悪デン。汚職、横領、麻薬常用、過剰暴力何でもありのベテラン刑事だが、そのカリスマ性が凄い。悪いのだけと魅力的。だがその悪が必要悪として言い切れるのか、そこを揺さぶってくる。その彼の元に来る新米刑事が、私の大好きなイーサン・ホーク。彼の可哀そうなこと、可哀そうなこと。勤務初日から「羊になるか狼になるか」という問いを突き付けられドラッグを薦められ、断るとキレられ(これが囮捜査なら終わりだと詰められ)吸引せざるを得ない。悪デンの言うことは受け入れがたいが、危険な世界で生きていくある道理があるのが面白い。そこから目まぐるしい現場の怒涛の迫力は是非、味わってほしい。後半の展開は、観るものの予想を超え、裏切ってくる。

観ているこちらはどこかで彼を信じたい「悪デン、、確かに悪いけど、何か大きな目的があって、悪徳刑事のフリをしているんだよね、そうであってくれ」と思いながら、そのぎりぎりの一線を彷徨う2人の間の緊張感がまた凄まじい。後半、羊代表のイーサン・ホークも牙を剥くが、クライマックス、命がけのイーサンの表情を是非、観て欲しい。そこには今まで観たことの無い、別人のイーサン・ホークがそこにいる。それもまた痺れた。

とにかく、デンゼル・ワシントンとイーサン・ホーク。この対極の2人の魅力に溢れ、緊張感に満ちた非常に締まった作品だと思う。