スガシュウヘイ

卒業のスガシュウヘイのレビュー・感想・評価

卒業(1967年製作の映画)
4.0
この映画で一番印象的なのは、ラストで結婚式に乱入したダスティン・ホフマンが、花嫁を奪って逃走するのだが、その後のバスの中で何故か二人とも無口で、悲しそうな顔をしているという事だ。

何故あんな顔?
さっそく後悔しているのか?
これはハッピーエンドではない。
幸福は一瞬。
おそらく両親とは、この後絶縁するだろう。そして言うまでもなく、愛だけで生きていける程人生甘くはない。ましてやダスティン・ホフマンは半分狂ったストーカー男なのだ笑。きっとまた何かに腹を立て、挙句浮気する。そして何もかも失ってゼロになり途方に暮れる。
the end.

ラストの二人の表情は、そんな不幸へ向かう辛い人生の始まりを暗示しているようで、とてもハッピーエンドには見えなかった。

しかし、そこが実に深い!
単純な恋の成就で終わらせず、その後の人生の過酷さを「沈黙」で表現してみせた点が、本作の名作たる所以だろう。

二人の沈黙が、何よりも多くのことを物語っている。これぞまさにサウンド・オブ・サイレンス!
すごいぞサーモン&ガーファンクル!


また演出的なことをいえば、カメラワークも凄くて、ロビンソン夫人の艶めかしい脚ごしに写るダスティン・ホフマンのカットは今見ても最高。また夫人のおっぱいがサブリミナルとして映されたり、突然ゴリラにズームアップするなど意味不明な演出があったりと、とても60年代とは思えない挑戦的なことをしており、さすが今まで生き残ってきた映画だけはあるな、と思った。


公開:1967年(米)
監督:マイク・ニコルズ
音楽:ポール・サイモン
撮影:ロバート・サーティース
出演:ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト
受賞:アカデミー賞監督賞、英アカデミー賞作品賞ほか。