マヒロ

汽車はふたたび故郷へのマヒロのレビュー・感想・評価

汽車はふたたび故郷へ(2010年製作の映画)
1.5
ジョージア(グルジア)出身の悪ガキ・ニコは、大人になり映画監督の道へと進むが、持ち前の反骨精神から制作側と全く折り合いが付かず、反発し続けた結果自分の撮りたいものが撮れないと考え、とうとう国を飛び出してフランスへとやってくるが……というお話。

オタール・イオセリアーニ監督の作品は初鑑賞。監督の半自伝的な作品でもあるといいうことで、最初に観るべき作品では無かったのかもしれないが、とにかく久しぶりに観ていて辛い映画だった。何か嫌なことが起こるというわけではないのだが、基本的に主人公であるニコのことがずっと好きになれないのと、ドラマ性を排除した物語とぶつ切りにも思える編集のテンポが生理的に合わなかった。淡々としているというよりは観客の方を全く向いていないという感じで、自分用に書いていた日記を読まされているかのような印象。自分勝手にやりたい放題した作品が結果面白くなるということはままあるが、今作は自分のツボには合わなかったみたい。

ニコは国に干渉され自分の撮りたい映画を撮ることが出来ずフラストレーションが溜まっていき、それは確かにツラいんだけど、では彼はどんな映画を撮りたいのか……というとそこが殆ど劇中で語られず、そんなに反発してまで何を撮りたいのかが分からずいまいち同情しきれない。断片的に見られる映像では、道で女の子に挨拶した男が突然爆死したり、詩人?の男が銃殺刑に処される場面などがあり、何やらアート系でメッセージ性の強い映画を撮ろうとしているようだが、ニコという人が何をもってしてそういう映画を撮りたいのかが明かされないのでどうも肩入れ出来ない状態が続く。

邦題はほのぼのヒューマンドラマみたいな感じにされているが、原作は「役立たず」という意味らしく、もしかしたらイマイチ好きになりきれない主人公や面白くなさそうな映画の描写も含めて強烈な自虐という可能性もあるのかも。
まあ、自虐だったとしても映画全体の何とも言えないテンポにノレないのに変わりはないが……。

(2021.150)
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