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汽車はふたたび故郷へのSNのレビュー・感想・評価

汽車はふたたび故郷へ(2010年製作の映画)
3.9
イオセリアーニの半自伝的作品。

ー自分自身に誠実であることー。イオセリアーニの言葉は、これが娯楽として、大衆に向けられた映画ではなく、彼自身とその周縁に位置し、ともに映画作りに勤しんだ同郷たちに捧げられたものであると、暗に教えてくれている。

要するに、外にではなく、限りなく内に向けられた映画なのである。よって、この作品を余すところなく十全に理解し、味わい尽くすことは、我々には不可能に近い。

劇的な展開も、さらには抒情的な結末も用意されていない。物語は、我々の日常がそうであるように、ほろ苦く味気のない連続の上で語られる。

しかし、それでもこの作品はどこか陽気で希望に溢れている。それは、体制に対する直接的な批判も深刻な描写もないことに起因するが、どこか執着のないイオセリアーニの気質にも大きいような気がする。

人が集まれば、酒を飲み交わし、歌い始める。度々、挿入される故郷グルジアの風景。そして印象的な列車のシーン。どれも強いイメージを与えないが、じんわりとしたノスタルジーに浸らせてくれる。
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