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ラビット・ホールのodyssのレビュー・感想・評価

ラビット・ホール(2010年製作の映画)
3.0
【悲しみを抱えつつ前進せよ】

見ていてつらい映画ですね。

ただ、映画は女優で見るものだと思っている私としては、ニコール・キッドマンの新しい魅力を発見したような気持ちにはなりました。

また、映画の内容にちょっと異議をとなえたい気持ちもないではなかった。今は少子化が進んでいるし、特にこの映画に登場するような「中の上」くらいの家庭(何しろ持ち家の敷地が3000㎡、いくらアメリカだってかなり広いほうでしょう)では子供にお金をかける。だから、事故で子供を亡くしてしまった後、喪失の思いがなかなか消えないわけでしょう。

でも、時代や環境が違えば考え方だって異なってくる。むかし、あまり医学が発達していなかった時代なら、子供が生まれてすぐ、或いは小さいうちに死んでしまうことは珍しくなかった。子供が死ねば悲しいけど、それにいつまでもこだわっているわけにはいかなかったのです。

別に百年以上昔の話じゃありません。私は幼稚園のころ借家に住んでいましたが、隣りの住人は、最初の男の子は元気に育ったけれど(私より一歳下だった)、その次の2人はいずれも生まれてすぐに亡くなってしまい、隣家のお母さんがとても悲しそうだったのを子供心にも覚えています。だけどさらにその後に女の子を作り、その子は無事に育ちました。でも途中の2人は亡くなっているので、その女の子とお兄さんはかなり年齢差があった。

それはさておき、この映画によってアメリカの一側面が見えてくる。子供を亡くした夫婦の集まりがあるなんてのはいかにもアメリカだな、という感じ。でも作中から分かるけど、向き不向きがあるんですよね。私だったらああいう集会には行きたくないな、と思っちゃう。信仰への態度も、人により差があるのがこの映画で分かります。キッドマンの演じている主婦は、インテリなんでしょうね。だから神を盲信するような言説には耐えられない。

しかし逆に、インテリだからわが子を亡くしたことにうじうじと(と敢えて言いますけど)悩むんだろうなとも。いや、悲しみは一生消えないとは思うけど、それにこだわりすぎずに、悲しみを抱えたまま前進することも必要じゃないの、と言いたくなる。

この作品は上っ面の救いみたいなものを提示していません。そこは誠実だとも言えるでしょうけど、でも、もう少し何とかしなさいっ、とキッドマンを叱咤したくなっちゃう映画でした。
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