似太郎

グリードの似太郎のレビュー・感想・評価

グリード(1924年製作の映画)
5.0
巨額の製作費を投入して作ったシュトロハイム監督による「人間の汚辱の歴史」がここに。本来であれば9時間ある上映時間を無理やり2時間に短縮させたもの。💸

あの淀川長治さんが戦前に観て、衝撃を受けた映画なそうな。彼の映画的嗜好はチャップリンといい、ヴィスコンティといい、溝口健二といい、どこかアブノーマルである。少なくともみんながイメージする教科書的な映画とは違う。「こういう映画も好きなんだ、へぇ〜」となかなか興味深い。

どうやら本作、貧乏人に一旦金持たせるとロクなことがない、という普遍的メッセージが根底にあるようだ。周囲に迷惑を掛けているだけでちっとも世の中のためになってない。この堕落した主人公を見ていれば明らかである。いつの世もカネ、カネ、カネ。そして権力構造。💰🤑

後半、主人公達が荒地で追いかけっこするシークエンスもなかなか出色の出来栄えで各キャラクターの荒廃した精神状況が良く伝わってくる。物欲と性欲と金銭欲に取り憑かれた人々の練りなす愛憎絵巻ほど観ていて楽しいものはない。💰😂

出来れば9時間の完全版が観てみたいのが正直な所だが、それでも本作の持つ壮絶なインパクトは後世に渡って語り継がれることだろう。不世出の鬼才が放つ一代醜悪・スペクタクル・ロマン。
似太郎

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