ほおづき

ブロークバック・マウンテンのほおづきのレビュー・感想・評価

3.5
差別や偏見が根強かった時代に愛し合う二人の同性愛者の苦悩を描いた映画。そして雄大な自然の美しさが印象的な作品。
 
観終わった直後に思ったのは
この物語は、婚約者のいる男が職場で恋人を作ってしまって、隠れて逢瀬を重ねただけのただの”浮気”のおはなしだったんじゃないかということ・・・
単純に偏見のある時代の同性愛者のおはなしという理由だけで美化されているだけのような気がした。例えばもし仮に主役の二人が異性愛者だったらただの不倫の話になる。本当はこの映画を偏見の目で観た人ほど純愛に感じてるんじゃないだろうかとさえ思う。
  
それとも・・・こんな差別意識の高い時代ではなく周囲の人の理解がもっとあって、主人公の二人がともに暮らすことができていたら、この物語はもっと良い結末をむかえていたのだろうか?
はたしてほんとにそうなのか・・・


こんなに長い間同じ人に思いをつのらせた経験がないからまったく想像できないけど、男女の結婚ですら離婚とか平気であるのに、20年以上も二人の愛が変わらなかったというこの物語は一見純愛のように見える。
でもそれって単純に、社内恋愛みたいな忍ぶ恋ほど燃え上がるっていう
のと同じじゃないだろうか?

相手のつらい気持ちも考えずにあたりちらしちゃうような人に、本当に愛はあったのだろうか?この二人が隠れた恋愛じゃなく一緒に生活していたら、この関係はこれほど長く続いたのだろうか・・・
そういう疑問が残ってしまう。
  
むしろ婚約者がいなければまだ良かったと思う。
二人が愛し合い、それでも世間の厳しい目があって公にできない関係だったからこそ、世間体を意識してカモフラージュして生きなければならなかった。
とかいうような話だったらまだ納得できたかもしれない。
この映画は純粋に、同性愛の純愛物語を描いているわけではなく、周囲の偏見とそれによる葛藤を描いた作品だと思うから。

普通に生きることを強いてくる社会で、人と違うことを否定されながらも他人の目を気にしないで自分を否定しないで恋愛をする。そのたった一握りの幸せを掴むということがどれほど難しいかってことを描くおはなしだと思うから。