ミサホ

ブロークバック・マウンテンのミサホのレビュー・感想・評価

4.1
録画してあったNHKの『映像の世紀バタフライエフェクト』の“運命の恋人たち”を観たら、本作を久しぶりに観たくなった次第。

映像の世紀のエピソードのひとつである“運命の恋人たち”は、人類にとって異人種間の結婚や同性婚に至る道のりがどれだけ長く難しいものであったかを実際の映像を通して知ることが出来る教科書のようなものだ。

映像の世紀って素晴らしい番組だよね。
アップデートしながらずっと続いて欲しい。

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さて、本作。
1963年。ワイオミング州ブロークバックマウンテンで、夏の間の出稼ぎに来た2人の男、イニス(ヒース)とジャック(ジェイク)。この出会いが彼らの人生をいいようにも悪いようにも変えてしまう。

山での仕事の中での突発的な感情の芽生えに彼ら自身も困惑しながらも愛し合う。特にイニスは少年の頃の体験によって、必死に自制するが、その感情は簡単には抑えられない。

そして夏が終わり、別れが来る。

イニスは結婚し、子供も産まれた。
日々の生活に忙殺され、順風満帆の生活に満足していたはずだった。

ジャックとの4年振りの再会。
この再会が感情を再燃させ、狂わせる。

同性愛は今でこそ、少しずつ社会に受け入れられつつあるが、本作のイニスとジャックのように、それを押し隠し、結婚生活を送っている人もいるだろう。

それでも社会は前に進んでいると思いたい。けれど、例えば、バイセクシャルですら、この2020年代であっても公言するにはやはりまだまだリスクを感じるよね。“ストレスなく堂々と”言える時代って来て欲しいけど、来ない気がする。

それくらい人間社会ってマジョリティが圧倒的な力を持っていて、居心地が良くて、安心するのだ。

本作は、彼らのその時代だからこその苦しみと、矛盾に満ちた生活で傷ついた女達の物語だ。決して明るい作品ではないけれど、美しく雄大な自然のように大きな心を持っていたいと思える作品だ。
ミサホ

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