スギハラカオル

ブロークバック・マウンテンのスギハラカオルのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

スッと入ってくる映画。それは分かりやすいっていうか、映画ってことを忘れるくらい、自然に滑らかに描かれてるように思えた。表現しようと必死過ぎないというか。これが怪演ってやつなのかな?だから引き込まれて、あっという間。
ヒース・レジャーのボソボソとした口調、俯きがちな視線、変わらない表情、ジェイク・ギレンホールの人懐っこさや語り口が、時間が経つにつれ「激しく」なってく感じ。活き活きとしてくるというか、人間臭くなってくるというか。2人の愛が燃えてった証拠なのかな。それは2人を取り巻く縛りが増えた証拠でもあるんだろうな。で、その加速感も凄く感じられた。

映画を観終わって振り返ると、序盤の雄大な自然が凄く印象的で、だからその分イニスとジャックの出会いがまだまだ相対的に些細なことに感じられたのかな。でも話が進むにつれて、2人を取り巻く人々は増えていって、それに伴ってカメラには色々な人が写り込んできて、そのせいか、2人を制限する「柵」みたいに感じられて。

随所に示唆的なカットがあって、なるほどなぁ、良いな、すげーなって。説明的過ぎないのに伝わるなあ。2人の関係を表すかのような天候だったり、あとは風景画のようなひいたカットがあるからか、要所要所のアップで映し出される表情は2人はもちろんミシェル・ウィリアムズも雇い主もジャックの両親もみんな印象的だった。2人のキスを目撃した彼女の表情や最後イニスを見送る父と母の写り方も凄く覚えてる。そっぽを向いた父じゃなく優しく笑う母にピントが合っていて、でも2人は一緒に写り込んでて。父親は家族の墓に埋葬すると話していて。上下逆になったシャツも、最後閉まるタンスも。

映画を貫くフォークギターの音楽は、曲調があんまり変わらないのに物語に合わせて違って聞こえた。下手に変化つけなくても見る側には局面に応じて解釈して聞こえるんだなあ。

同性愛だからか、どっぷり感情移入とはならなかった気がする、ボロボロ泣くような。自分と照らしあわすとはならないからかな。それよか、伝わる映画だったなって。表現したいことが見やすいというか。反対にそっちに目が行き過ぎちゃった気も。
監督はどこまで意図して映画を作ってるのかな。