ピュンピュン丸

ロード・トゥ・パーディションのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

4.0
名優ポール・ニューマン最後の勇姿。
(次の作品はTVドラマで、さらにその次は『カーズ』で声優。最後の作品は『ミーアキャット』でナレーション。)

ポール・ニューマンは組織のドンの役で、トム・ハンクスは彼に育てられた殺し屋で有能な部下という設定。ダニエル・クレイグはニューマン演じるドンの実子役。トム・ハンクスを付け狙う殺し屋の役にジュード・ロウ。

ある時、トム・ハンクス演じる殺し屋の長男が、父の殺人現場を見てしまうことから悲劇が始まる。父と子の絆の物語。命を狙われる危険に立ち向かっていくなかで、父に対する不信はいつしか固い絆へと変わっていく…。

雨の中に立ち尽くすポール・ニューマンが印象的。

007のダニエル・クレイグがダメ息子役。本当にカッコ悪い。笑

ちなみに、ニューマン演じるドンがドラ息子(ダニエル・クレイグ)に殴りかかる……というシーンは、ニューマンが監督に頼んで採用してもらったシーン。とはいえ、圧倒的キャリアのポール・ニューマンだが我儘ぶりはなく、セリフを変えてもらったのも一字だけだったらしい。

ところで、『明日に向かって撃て』などでカメラを務めてきたコンラッド・ホールが撮影中、急に泣き出したというハプニングがあった。ニューマンを撮影していて、往年の輝きが失われていたことに胸が詰まったらしい…。

子役含め素晴らしい俳優陣で、観ていて楽しかった。

しかし…演技力がズバ抜けていたとしてもトム・ハンクスの殺し屋はあまり似合わない。同じように、ニューマンの演技力は衰えてはいなかったが、マフィアのボスは似合ってない。理知的すぎて、どこか軽いのだ。この手の作品だと、どうしても『ゴッド・ファーザー』のマーロン・ブランドと比較してしまうが、悔しいけど、マーロン・ブランドのドン・コルレオーネには及ばない。

かつて、ロッキー・グラジアーノというボクサーにくっついて役作りをした俳優が2人いた。一人は『波止場』のマーロン・ブランドで、もう一人は『傷だらけの栄光』のポール・ニューマンだった。どちらも素晴らしい映画だが、ボクサーのシーンはどうみてもブランドのほうに軍配が上がる。若かりしころ、ブランドのそっくりさんという汚名を浴びせられて苦労したニューマンだが、ニューマン自身、本作の演技をするにつけ、亡きブランドのゴッド・ファーザーを意識したのではないか。だとしたら、映画人としても、一人のアメリカ人としても圧倒的にブランドに勝る成功者であるポール・ニューマンだが、こと演技に関しては、人生をかけて磨き続けたものの、ついにブランドには及ばなかったといえる。きっと、ポール・ニューマン自身もそう実感し、苦笑していたのではないかと思う。

本作で、ニューマンはアカデミー賞に10回目のノミネート。しかし、助演男優賞としては初めてのノミネートだった。

ニューマンらしい。

偉大な映画人のご冥福を改めて祈る。

そして、ありがとう。