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ロード・トゥ・パーディションのTのネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい…ありがとう、サムメンデス

この年代を描いたギャング映画が好きだ。
アンタッチャブルを見てから、男たちの熱く重厚な物語が大好物になった。
でもこの作品はギャング映画というよりかけがえのない父と子の絆の物語だね。
本作はいつもとは違うトムハンクス。
温厚な役をやらせたら右に出る者がいない彼だが、今回はギャングの役。
脇を固める俳優陣も素晴らしい。ダニエルクレイグがソファで横になりタバコを吸う。もうイカしてる。

物語は1つの事件が引き金で走り出す。
お父さんはいつもルーニーさんを手伝ってるんだ。弟に言い聞かせるマイケル。
いやでも待てよ、お父さんって何してるんだろう。
それは当たり前の好奇心だろう。
しかしその思いが歯車を大きく狂わせる。

追われる身になる2人。そして追うのは…残念なジュードロウ。その頭もうちょいどうにかならんのかと思ってしまうけど、変態殺し屋の役だからまあいいよね。

アクションがかっこいいし、特にあの雨の中ルーニーの取り巻きがどんどん倒れていくシーン。銃声なし、音楽だけが静かに流れる。最後に1人残るルーニー。最高に美しい。この2人の絆も心を揺さぶる。
それ以外にも扉の鏡に映るコナーの死体とか細かいカットが素晴らしい。

ラスト、パーディションにたどり着く2人。もうその映像が美しいのなんの。湖の畔で物語の終幕を思わせる。
しかしまだ終わらなかった。
家の中からトムハンクスが外を見つめる。
角度がまた絶妙。
そこにマイケルが駆けつける。見ていてこの時よぎったのがトムハンクスがルーニーに言っていた言葉

“マイケルは天国に行ける”

彼の、息子を自分と同じ道に引きずり込むことは絶対にしないという強い意志を感じた。
そして思い返すと今までマイケルJr.が泣くシーンは出てこなかった。母と弟を殺され父が帰ってきた時も椅子にただ座るマイケルJr.。うなだれる父を見つめるマイケルJr.。
これはまさにギャングであるマイケルのDNAを感じさせる。強い心。
“おまえはどちらかというとおれ似だから”
とマイケルも言っていた。

それがフラッシュバックしたあとの父の魂の発泡。マイケルに人殺しは絶対にさせない。いや、マイケルは撃てない。わかってる。最後にやるべきことをやるんだ。その決意が伝わってきて涙が止まらなかった。そして今まで涙を見せなかったマイケルがうなだれて泣き喚くところを見て涙腺崩壊した。

ブリッジオブスパイ、1917、ジョーブラックをよろしくをはじめ、トーマスニューマンの音楽は本当にいいな。
心の深層までじわーっと染み渡るような感覚。
風景、音楽、構図、随所にサムメンデスの美学が詰まった映画。
父と子の絆を描いた隠れた名作。
スタンディングオベーションです。
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