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ロード・トゥ・パーディションのRのレビュー・感想・評価

4.4
僕の大好きなサムメンデス監督の作品なのに、何となくテーマに興味を惹かれずいままで見てなかったんやけど、いい機会だから見てみたら、やっぱいいですねー。アメリカ禁酒法時代のギャングの3組の父と息子の関係を描いています。主人公はトムハンクス演じるサリヴァン。誠実で真面目な正統派トムハンクス、チャーミングでハッピーなロムコム系トムハンクスとはガラッと違って、常に苦々しいしかめっ面してるダークな男を演じてて、あまりに印象が違っているため、いくつかのシーンではトムハンクスに見えない瞬間も。僕トムハンクスの出てる映画ってなんかあまり見る気が起こらなくて、大体同じようなキャラやから、善良な人が出てくる善良な映画なんやろな、と思ってしまう。でも、実際見てみるといいんですよねー、トムハンクス、めちゃくちゃ😍。もういっそ好きな俳優のひとりにカウントしたいくらい、すべての映画でイイ。しかもなんだかんかで結構ハンサムじゃありません? 本作ではいつもと違った感じが魅力的。孤児だった彼は、ポールニューマン演じるギャングのボスに引き取られて育てられ、ボスの側で有能なヒットマンとして生きている。ボスには血のつながったコナーという息子もいて、こちらはダニエルクレイグが演じてる。サリヴァンとは正反対の、頭が悪くて情けないどうしようもない男である。どんな映画に出ても決まって有能なダニエルクレイグがそんな男を演じてるなんて思ってもみませんので、どれだけ頑張ってもぜんっぜんダメンズに見えず笑 そして、サリバンとサリバンの息子マイケル。マイケルは父がどんな仕事をしてるのか知らないので、ある夜、仕事に出かけていく父にこっそりついていくと、そこは殺人の現場だった。コナーとサリバンはマイケルがそこに隠れていることに気づき、このことは絶対に喋らせない、とサリバンは強調するのだが、これはマズイぞ、と思ったコナーは、とんでもないことをしでかしてしまう……そしてサリバンとマイケルは逃避行へ……彼らを殺すためにコナーが雇うのはジュードロー演じる殺し屋。写真機を持ち歩いて自分の殺した人たちを写真にとり、集めてる男。これが、禿げている美しき悪魔のような風貌で、はじめて画面に登場するときのドリーズームショットはすばらしい。まるで異世界から抜け出して彼らを殺しにやって来ているよう。そして、終盤になると、このどこまでも不気味な男が、本当に悪魔のような風貌になっていくのが恐ろしい。この人の出てくるシーンは70年代、80年代のホラー映画みたい。そうそう、こんな感じで本作を見てて思ったのが、サムメンデス監督の映画ってよく考えるとどれも寓話的な雰囲気が濃厚だなーと。本作は、全体的に、まるで少年の目からみた冒険譚のように見える。サリバンが車の運転を教えるシーンとかはその雰囲気がピークに達し、個人的には、さすがにここは本作の持つダークでウェットな感じから遠ざかりすぎかな、と。しかしながら全体の完成度からするとほんの瑕瑾でしかない。すばらしい俳優陣によるすばらしい演技が見どころ満載で、ほかに忘れてならないのがキャリア最終期のポールニューマン。この人の持ってる大物感スゴい。迫力がスゴい。あと、目立たない地味なチョイ役でジェニファージェイソンリーが出てるのもびっくりだし、不思議と目を引く名脇役ディランベイカーも見るたびに嬉しい。そして、彼らの存在感に勝るとも劣らないのが、一瞬たりとも目を離させぬ映像の美しさ。闇と影の支配する滑らかな映像がクラシックな艶やかさを生み、古き良き白黒映画のようにすら見える瞬間も。ひとつ目のクライマックスのシーンは、これぞサムメンデス!と叫びたくなる、過度なほどドラマチックな映像美に心をぎゅっと掴まれる。あと、トーマスニューマンによる音楽もほんま最高。この人の音楽は心の琴線に触れるいいものばかり。僕の大大大好きな映画の多くをこの人が担当してる。すごいわ👏 さて、この父と子のペアがどのような結末を迎えるのか、悪はその連鎖を善に導くことができるのか。最後のナレーション「もし、サリバンは善人だったのか、と聞かれたら、彼は僕の父だったと答えるだろう」その意味を、是非ともご覧になってご確認ください。てな感じでまごうとなき傑作ではあるのだが、さて、これをもう一度見たくなるかと言うと、んー、まぁ一回でいいかなって感じ。僕個人としましては、現在までのサムメンデス作品を、見ていないスペクターを除いて、好き順に並べると、以下の通りとなります。

レボリューショナリーロード
アメリカンビューティ
1917
ロードトゥパーディション
スカイフォール
ジャーヘッド
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