KSat

ロード・トゥ・パーディションのKSatのレビュー・感想・評価

4.6
禁酒法時代のアイリッシュマフィアをモチーフにした「子連れ狼」。

サム・メンデスが「アメリカン・ビューティー」に続いてトーマス・ニュートンとコンラッド・L・ホールと組んだため、音楽や撮影はちょっと似てはいる。

しかし、この映画の撮影は凄すぎ。

ホッパーの絵を参考にしたらしいが、終盤の田舎の風景や湖畔の部屋はワイエス、ダイナーやシカゴの待合場、子供部屋やダイニングはロックウェル、冒頭の自転車で走る雪景色はロウリーの絵を思わせ、20世紀の具象絵画への確かな敬意を感じる。撮影監督に必要なのは技術力だけでなく、美術に対する造詣の深さとそれを理解し、生かすセンスにもあるのではないだろうか。

前半の息子主観の殺しの怖さ、クライマックスの襲撃とその後に周囲の窓から次々に現われる人影、湖畔の家での静かで残酷で、感動的なあの一連のやり取りなど、とんでもない場面の連続。どう考えてもアカデミー賞は「シカゴ」なんかではなく、こっちにあげるべきだった。

一見不似合いなように見えるが、トム・ハンクスの寡黙な殺し屋/父親の様はこれはこれでアリな気がするし、ポール・ニューマンの渋さは一級品。それに対し、ジュード・ロウやダニエル・クレイグはちょっと漫画のようだがめちゃめちゃ怖く、バランスが取れている。色々な意味で完璧な映画だ。
KSat

KSat