高橋早苗

愛より強い旅の高橋早苗のレビュー・感想・評価

愛より強い旅(2004年製作の映画)
3.6
島国で生まれ育った私には
わからないことがある。

移民。

一生わからないだろう。
親は昔 遠い国から
ここへやってきただなんて。

ザノとナイマは そんな二人。



・・・パリの街を見下ろす部屋で
「アルジェリアへ行こう」
と言い出すザノ

ナイマは笑いだして 聞く
「音楽はどうするの?」
「やめる」
・・・どこの壁だろうか
レンガを外し 穴を掘って
バイオリンを入れて
コンクリを流し
またレンガをはめてく

まるで バイオリンのお墓
両親を事故でなくしてから、
弾くこともなかったバイオリン



スペインへ向かう 無賃乗車の窓の外は
田舎の風景
・・・を見ているかいないのか
ヘッドフォンはテクノの爆音


途中出会うのは
二人と逆に パリを目指すひと達
「名前は?」の次に
「宗教は?」とくるのは土地柄か
いや“大陸”というやつか。



歩けば雨に降られ
野宿すれば靴を盗られる

フラメンコ
浮気
喧嘩
・・・バイトし やっと乗り込んだ船は
モロッコ行きだった・・・

もちろん、ひき返すなど出来ず
陸路“国境越え”を目指す



やっとたどり着いたアルジェは、
旅の間に起きた大地震の爪痕が
まだ生々しく残っていた

首都を目指す二人を 阻むような
人の流れ


昔 こうして
この土地を出て行った
自分のルーツ・・・



ザノは懐かしい我が家を見つけ
今の持ち主にも 暖かく迎えられる
写真を見せられ 涙するザノ

一方 ナイマは
故郷に居心地の悪さを感じていた

懐かしさよりも
自分がよそ者だという疎外感
・・・土地の者は
それをちゃんと見抜いていた



「リラ」と呼ばれる
土地の音楽に身をゆだねて
精神を癒やすという儀式

止まない音を声を 浴びながら
二人は連れ出されていく

そこは出口か、入り口か・・・



「モンド」を観た時
尺八みたいな笛の音が聞こえて
懐かしいような不思議な気分になったものだが
同じ音が聞けて謎がとけた。



あっちの人って
なんで皆
靴にお金を隠すのかな?

それで靴脱いで野っ原に寝てるし
そりゃあ盗られるさ(笑)



原題は「EXILS(亡命)」
ルーツを辿るのは
自分を取り戻す
精神的“亡命”なのか・・・


旅する二人が、不思議と
街ですれ違う若者の姿とだぶる。

片時もヘッドフォンを離さないところ・・・

あれをみてると
日本人て精神的に放浪してるのかも?って思う。
こだわりがないというか・・・

違うのは
土地の音楽が あそこまで強くない
ということか。

いやあるとこには あるんだろうけど
祭りは皆
観光地の出し物みたいになってるでしょ。

どこの家にもテレビがあって
全国民が
“我が身に直接関係のない
”同じニュースを
大事に見てたりするしさ。



・・・旅の始めは
パリっ子らしく(?)
いっぱい重ね着して
バックをいくつも斜めがけしてる二人が

旅が進むにつれ
どんどん身軽になっていくのが
なんだかうらやましくみえた。
どんどんいい顔にも なっていったし。


片時もヘッドフォンを離さない二人は
行く先々の土地の音楽も
浴びるように聴く


その先に故郷があって、
そこに根づいてる音も浴びて・・・
それもなんだかうらやましい。



ネットもないサッカーゴールがある、野原みたいなトコで
野宿するシーンが好き。

「Un,Dos,Tres Nada Mas」聴きながら
ナイマが踊り狂う
…で、目が覚めたら
ザノの所持金は ブーツごと盗られちゃってんのよねw
高橋早苗

高橋早苗